読書

最愛の子ども

松浦理英子。デビュー作の「葬儀の日」からのファンで、「親指Pの修行時代」は何度も読んだ。「犬身」も好きだったなあ。その「親指P」や「犬身」も含め、松浦さんの小説はいつも「普通」ではない性愛を描いている。特に女性同士の愛は松浦さんの十八番。こ…

レモン畑の吸血鬼

本屋さんで装丁にひとめぼれ。ジャケ買い。内容もとても好みだった。 カレン・ラッセルの圧倒的な想像力。しかし「妄想」の源には、圧倒的な知力、リサーチ力がある。日本人にとっては馴染みやすい「お国のための糸繰り」。「女工哀史」などで知られる明治時…

名前探しの放課後

「ぼくのメジャースプーン」があまりにも面白かったので、そのままの勢いでこちらも一気に読了。うん。好みとしては「メジャースプーン」だけど、これもこれで良いんじゃない。ちょっと出てくる人たちがいい人すぎるのは気になるところ。こちらも「仕掛け」…

ぼくのメジャースプーン

辻村深月さん。これもまた自分だけでは手に取りようがなかった本で、紹介してくれた友人に感謝感謝。 えっとですね、普段、国産のミステリーとか読まない私と同類のひねくれた人たちにもこの小説はおすすめできます。私からも。自信を持って。 とにかく読み…

わたしは驢馬に乗って下着をうりにゆきたい

センスがいい友達がいるというのはありがたいことで、自分だけでは出会えなかったであろう本に出会えたり、久しぶりに色々なもの、こと、感覚、その他を思い出したり。鴨居羊子。読んでるうちに思い出したけど、その友人がいなければ彼女の本を手に取ること…

ミシェル・ウエルベック『服従」

シャルリー・エブドのテロ事件当日に発表された予言的小説。ということで大変話題になった本。ミシェル・ウエルベックはなんだか興味を惹くタイトルの本(「素粒子」とか)が多く、気になっていた。内田樹さや、宮沢章夫さん、高橋源一郎さんから坂口恭平に…

グレッグ・イーガン『ゼンデギ』

イーガンファンからは物足りないという声が多いようだ。それもよく分かる。イーガンのトレードマークというか、他の作家にない特異点は、いうまでもなく超難解かつ精緻な科学理論にある。最先端の物理、数学理論を駆使しながら、どこまでも自由に飛躍する想…

慈しみの女神たち/ジョナサン・リテル

上下巻あわせて約1000ページ。二段組。改行もほとんどなくびっしり埋まった紙面。そして大量の脚注。とりかかるのに勇気のいる本。いまは週末ぐらいしか本を読む時間がないこともあり、読了まで2ヶ月近くを要してしまいました。でも面白かったー!!えっと…

HHhH(プラハ、1942年)

小説とは何なのか?背表紙の帯に書かれたコピーが突き刺さる。まさにそのコピーにあるとおり、この書物(同じく帯にあるマリオ・バルガス・リョサと同じく、僕もこの本を前置きなく「小説」と呼ぶことには抵抗があり、ここではあえて「書物」としておく)は…

ミランダ・ジュライ「いちばんここに似合う人」

久しぶりの図書館で目についたタイトル。記憶にない名前だったが、信頼する岸本佐知子さんの訳であること、ポートランドに居住しているパフォーミング・アーティストであること、インスタレーションや映画も手掛けており、長編デビュー作でカンヌ映画祭パル…

東京命日

各所で大評判の島田虎之介をようやく初体験。すっかりやられてしまっている。今回読んだのは『東京命日』『トロイメライ』『ダニー・ボーイ』の三作品。どの作品も素晴らしかったが、最も複雑で、最もずしりときた(好みだった)のは『東京命日』だった。映…

雪沼とその周辺

久しぶりに本のことも。久しぶりに何かを書きたくなる本だったから。堀江敏幸さんの本は初めて読んだ。薦めてくれた友人に感謝。とても好みの本だった。とても静かな、静かな小品が並ぶ連作短篇。ひとつひとつの物語は独立しているようでいて、「雪沼とその…

ハーモニー 伊藤計劃

久しぶりに何かを書き留めておきたいという読書。世界が大混乱に陥った《大災禍》を経て実現された、思いやりに溢れる、福利厚生社会。WatchMeと呼ばれるソフトウェアが体内にインストールされ、常にメディケアとつながることで、誰もが病気で死ぬことがなく…

切り取れ、あの祈る手を

2012年のスタートにあたり。昨年は読書量の極端に少ない一年だった。長距離の出張が減ったこと。通勤中についついTwitterをだらだらと眺めてしまうこと。理由はいろいろあるが、311以降、あまり本を読む気分になれなかったというのもまた理由のひとつ。しか…

恋する原発 高橋源一郎

facebookに<「ま○こ」と「ち○こ」と「う○こ」の話ばっかりですが、切実なる恋の物語でもあると思います。「○ん○」の話で号泣>とか書いたらいつになく反応があったりして。みんなこの手の話題は好きなんだな〜(笑)まあ冗談はさておき。あらゆる不謹慎ネタ…

火を熾す ジャック・ロンドン

村上春樹で一番好きな本は??定番中の定番な話題ですが、僕は(気分次第で言うことが変わることもあるけどまあ通常は)「神の子どもたちはみな踊る」をあげます。なかでも好き、というか、繰り返し繰り返し読んでしまうのが「アイロンのある風景」。前のエ…

縄文聖地巡礼

中沢新一・坂本龍一の『縄文聖地巡礼』読了。前に感想を書いた『アースダイバー』の続編ともいえるつくり。「縄文」に魅せられた二人が、「縄文」の記憶を求めて日本各地を旅する。対談の採録ということもあり、『アースダイバー』よりもさらに読みやすくな…

中沢新一「アースダイバー」

面白かったー。縄文地図を片手に東京を歩いてみるという試み。洪積層(昔から陸地だった乾いた土地)と沖積層(縄文時代に海面が下がるまでは海だった湿った土地)を色分けし、そこに神社や遺跡などの位置をプロットした特性の地図。その地図を片手に東京を…

memorandum teiji furuhashi

貸してもらった。もったいないのでちょびちょびと読んでいる。 この本を紹介してもらうきっかけは「S/N」を観たことで、「S/N」が制作される前に古橋さんが自らがエイズに感染したことを信頼できる友人たちに知らせた手紙は、本当にすごい。「ある細胞が私を…

日の名残り/カズオ・イシグロ

これまでに読んだものでいうかぎり、カズオ・イシグロの到達点は「わたしを離さないで」なのかなと思う。あの強烈な印象を残す名作に比べてしまうと、やはり「若書き」というのか、「うまさ」だけが先にたってしまっている印象がある。あるいは「英国的な執…

ミラン・クンデラ「存在の耐えられない軽さ」

僕にはひっそりと実は未読だったりする本がたくさんある。いわゆる「こっち側」の人の多くが読んでるのに、実はまだ読めていない本。ミラン・クンデラの「存在の耐えられない軽さ」もそうした本のひとつで、morieさんの推薦がなければ、そのまま読まずにいた…

沼地のある森を抜けて/梨木香歩

こちらは現代の日本が舞台である。叔母の死を契機として世話をすることになった不思議な「ぬか床」。この「ぬか床」には、どうやら主人公の家族にまつわるさまざまな物語が、それこそ糠味噌のように、漬けこまれ、発酵しているらしい。そしてやがて、いやい…

あなたの人生の物語/テッド・チャン

グレッグ・イーガンと並び「今」を代表するSF書きとの呼び声高いテッド・チャン。遅ればせながらやっと読むことができた。 本作に含まれる中短篇は全部で8篇。その全てが素晴らしい独創性と知的ユーモアに溢れている。中でも表題作は、たった100pの中にS…

われらが歌う時/リチャード・パワーズ

自己紹介代わりに、もう少し、過去にmixiで書いた日記を転載してみます。今日は読書ものから何点か。最初はリチャード・パワーズの「われらが歌う時」********舞台は20世紀のアメリカ。音楽に特別な才能を持つ三人兄弟の次男が語り手となり、物語は…