私はあなたのニグロではない

年末恒例、駆け込みで映画を観るよ。28日はUPLINKで「わたしはあなたのニグロではない」。

 

アメリ黒人文学を代表する作家であり、60年代公民権運動の中心だったジェームス・ボールドウィンによる原作の映画化。メドガー・エヴァース、マルコムX、そしてマーティン・ルーサー・キング牧師。人種差別と戦った3人のレジェンドとの対話と交流を軸に、ロバート・ケネディ司法長官との対決などを盛り込みつつ、豊富な資料映像とボールドウィン自身の言葉から、差別とは何かを鋭く問いかける。

 

ボールドウィンの怒りは理不尽な人種差別への憤りを越え「アメリカ」という社会、国そのものに向かう。記憶だけで書いているので言葉として正確でないかもしれないが、映画の最後に紹介される彼の言葉は明快だ。白人たちがなぜ自分がニグロを必要としたのかを問い直すことができたら、何かが変わるかもしれない。

 

映画のなかではニュース映像などとあわせ、多くの映画も紹介される。先住民をまるでゲームのように撃ち殺してゲラゲラ笑ってる西部劇は問題外として、より悪質なのは白人と黒人の美しい邂逅のようにみえて、その実、白人が期待する(白人にとって都合がいい)黒人を描いたにすぎない「アンクル・トム」や「手錠のままの脱獄」なのかもしれない。そこにあらわれるのは、白人が必要としたニグロ。あなたのニグロ。

 

リベラル風の学者(白人)とボールドウィンの対談も興味深い。なぜそんなに人種を気にするんだ。私はあなたの小説を高く評価している。人種よりもそのことのほうが重要ではないか。その表面的にはリベラルなように感じられる学者の主張に対し、ボールドウィンは怒りをもって対抗する。人種の壁は存在する。あなたは生活のなかで実際に自分の命の危険を感じたことがあるのか!!

 

ここでボールドウィンが言っていることは、人種差別だけでなく、例えば女性に対する差別にも共通する問題だと思う。一番恐ろしいのは差別している側の無意識。無自覚。私自身も「表面リベラル」になりがちなタイプだと思うので、そこはより深く自覚し、より深く考えなければならないと思う。

 

エンターテイメントして楽しいかといえばそんなことはなく。極めてシリアスな映画だし、なによりそれなりの予備知識がないと観れない映画だと思います。少なくとも公民権運動の大まかな流れ、マルコムXキング牧師、それぞれの行動、主張の相違点程度はあらかじめ知ってないとちんぷんかんぷんかと。。。たださまざまな資料映像とボールドウィン自身の言葉を自在に組み合わせた編集は見事で、とても良質なドキュメンタリーになっていると思います。音楽超かっこしいし。

 

あとどうしてもこれだけいいたいんだけど、この映画が大ヒットするというのもアメリカだなと。日本でこれだけ骨太なドキュメンタリーがつくれるか、仮につくれたとしてヒットするか。ボールドウィンの言う通り深い病を抱えているアメリカでもあるのですが、それでもやっぱり、なんというか、多様な国だなと思います。

 


私はあなたのニグロではない 本予告