memorandum teiji furuhashi

貸してもらった。もったいないのでちょびちょびと読んでいる。
この本を紹介してもらうきっかけは「S/N」を観たことで、「S/N」が制作される前に古橋さんが自らがエイズに感染したことを信頼できる友人たちに知らせた手紙は、本当にすごい。

「ある細胞が私を守ってくれている。ならば私の精神を守ってくれているのは想像力と愛だと思う。私の細胞がVIRUSを許容しているように、私は想像力と愛であらゆる人を許容したい」

表現すること、何かをアウトプットすること、もっといえば生きていくことそのもの、に対する古橋さんの真摯さに震えがくる。

「そう、私はすべての戦場にいてそこに飛び交う全ての弾にあたりたかったのだ」

「S/N」のクライマックスを思い出す。そこで描かれるのはまさに「全ての弾にあたる」人たち。「弾にあたってしまったけれど、その戦場にいたことを決して後悔しない。そこまでして私は当事者でいたかったのかもしれません」という古橋さんの言葉を知った上であのシーンを思い出すと思わず涙があふれてくる。

「アーティストは愛を語る人ではなく、愛そのものでなければならない。」
「そしてそのために払わなければならない代償もはかりしれない」

当事者であり続けることの大切さ。表現に対して真摯であり続けることの大切さ。自分は古橋さんのような天才ではない、などといって逃げている場合ではない。単なるコメンテーターに堕することなく、世界と向き合い続けること。それは(とても難しいことだけど)その気になれば誰にでもできる。

なんらかの形で「表現」に関わる人にとっては必読の本だと思う。
僕もやはり自分の手元におきたい。そして何かに迷ったときには、この手紙を読み返したいと思う。