サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム

月曜日にみたんだけど、水曜日にみる予定の友達がいたので感想書くの我慢してた。

まずはとても良く出来た青春映画。主役の女子ラッパーはむちゃくちゃキュートだったし、安藤さくらはもうほんとに凄くて、「お約束」のラストシーンはもちろん、あちらこちらで爆笑したし、号泣した。

でもこの作品について何かを書くのであれば、やっぱり「シリーズ化」のことに触れざるをえないのかな。「釣りバカ」を継ぐ。冗談だろうと思ってたその言葉はどうやらある程度まで本気のものらしく、今回の「2」は、「サイタマノラッパー」をシリーズ化のために必要な「仕掛け」を随所にちりばめた作品になっていた。

シリーズ化のための仕掛け。まずは第一作の主人公であるイックをヒップホップ伝道師のようなキャラに転換したことことに触れるべきだろう。これは見事な発明だと思う。

実は「サイタマノラッパー」の続編ってきいたときに一番どうすんだろって思ったのが、イックのキャラクターなんだよね。「サイタマノラッパー」って、ものすごく大胆に省略すれば、何かに行き詰ってる人が「日本語ラップ」という≪表現手段≫を手に入れることで自己を救済するという物語なわけで、それはとても現代的なテーマではあるけど、シリーズ化にはどう考えても向いてない。同じ人が何度も何度も落ち込んだり、復活したりしててもちょっと・・・それはやっぱり退屈するよね。

ところが本作は、イックくんをエイリアンにしちゃうことで、それを解決してしまっている。物語の本筋を担う主人公は別にいて、イックは物語のターニングポイントで外部から登場する。これはホントに見事な発明で、シリーズ化に耐えうるほどのキャラクター(俳優)ではないイック(駒木野くん)を活かしながら、「サイタマノラッパー」を続けていくためには、確かにこれしかなかったのだろうと思える。イックを外部化したことで、はじめてシリーズ化のポテンシャルを獲得したってことかな。確かにこれなら、毎回毎回、さまざまな境遇の主人公を設定することができるわけで、「サイタマノラッパー」が持ってる基本的な物語の構造(何かに行き詰ってる人が「日本語ラップ」という≪表現手段≫を手に入れることで自己を救済する)を崩さないまま、幾通りもの物語を紡いでいくことができるだろう。

逆にちょっと心配になったのは、あまりにも「物語の構造」ががっちりとしすぎてないかい?というあたりかな。目を覆いたくなるような辛いライブ、去っていく友人と残る友人、そして何より、やっぱりラップが好きだーという気持ちがもっともラップに似つかわしくない場所で炸裂するクライマックス。今回の作品は、予想していた以上に、前作の繰り返しだった。おそらくは今後も同じ構造で映画をつくろうとするんだろうが、そういう「お約束」を守りながら今度はそうきたかーと驚かせ続けるのは大変だろうなと思う。

あとはやっぱり共感のレベルっていうのかな。これは個人的な嗜好性の問題なので、あまり書かないほうがいいのかもしれないが、「サイタマノラッパー」って、主人公たちに共感して、「これはおれだー」ってなるところに魅力があるわけで、なぜそんな心境になるかというと、ある意味映画としてブサイクだからってところもあったと思う。自主制作だからこそ、金がないからこその涙ぐましい創意工夫、それが映画のテーマに絶妙にマッチしていた。

今回の作品は前作に比べると遥かに「立派」になってる。安藤さくらさんや岩松了さんがでてることもあって演技の水準は格段にあがってるし、カメラも前作より全然いいものを使ってるはず。でも、そうやって明らかに「映画」としてのクオリティがあがったぶん(普通の映画に近付いたぶん)、逆に「これはおれだー」的な共感に達するのは難しくなったようにも感じてしまった。もともと冷静に「映画」として評価しだしちゃうと、わりと欠点が多い映画なんだよね(意図が不明確な長回しとか、編集のテンポとか、そこは台詞で説明しちゃダメとか、エピローグがちょっとくどいくねとか・・・)。

もちろん映画としてのクオリティがあがることは悪いことじゃない。だけど、不器用さそのものが映画の魅力になっちゃってた分、入江監督が映画監督として「成長」していくことが、もともとこの映画が持ってた野放図なエネルギーをそぐことになりゃしないかと・・・それはやっぱり心配しちゃったかもな。

ただね・・・

今回の「2」までを見る限りはですね、もう大成功してると思いますよ!!

もうさ、映画館を出たあともしばらくは「シュ、シュ、シュ」っていう彼女たちの歌声が頭から離れないわけですよ!!それだけでもう、これ大傑作でしょ!!
なかでもエンドロールの曲は良かったな〜。あの楽しそうに歌うシーン。もうクライマックス以上に号泣ですよ。よかったね、よかったねって。もうね、拍手が起こる劇場があったというのがとても良く分かりましたよ。

だから入江監督にはね、上に書いたようなジジイの勝手な老婆心を高らかに笑い飛ばしつつ、どんなに駄作が混じってもいいから、頑張ってこのシリーズを続けてほしいと思います。寅さんにしろ、釣りバカにしろ、「お約束」を繰り返しつつ、いいものも悪いものもありつつ、そこがまた気持ちいい!ってところに醍醐味があるんだもんね。「サイタマノラッパー」には、充分にそういうシリーズものになるポテンシャルがあると思いました。

経済的に大変らしいですけど、ぜひまた、次の「サイタマノラッパー」が見たいと思います。頑張ってください。監督。