ブルーバレンタイン

鬼畜の所業なり!!なるほど、これは町山さんが激賞するわけだ。とある倦怠期の夫婦が別れに至る一日と、その夫婦が出会ってから結婚するまでの数ヶ月(?)を時間軸をシャッフルしながら見せる構成は見事。リアリズムに徹した演出とそれに見事に応えてみせた役者の演技、カメラの使い分け。映像表現としての完成度が半端なく、だからこそ破壊力も半端ない。この映画を観ると誰もが思わず自分の恋愛体験あるいは恋愛に対する価値観を吐露しだしてしまうと思うのだが、あえてそこを避けて、ひたすらに主人公二人をdisってみるテスト。

まずは男性側のディーン。もうね、彼は「恋に恋する」ロマンチストというか、「恋に恋している」自分がかわいいだけのナルシストなんだよね。彼の最大の問題点は、かせぎがないことでも禿げたり腹がでてることでもなく、安易なヒロイズムに安住していることなんだと思う。タマフルポッドキャストで師匠も言ってたけど、彼は手前勝手に設定した「型」に自分をはめ込むことで、あらゆるコンプレックスから逃避している。しかもパートナーにも自分の決めた「型」の中にいることを求める。その逃避に自分でも気付いてるから、いつも自信なさげで卑屈な態度になってしまう。でもこういうところって、多かれ少なかれ俺にもあるんだよな〜。俺には仕事しかないんだとか言っちゃって、ストイックなふりをしたりしてさ・・・って、いかんいかん、自分に引き寄せないでひたすらdisるのだった!

対するシンディ!!彼女は悪気はない悪女(男にもこういう人いるけど)の典型で、実は本気で人を好きになったことがないのだと思う。そこには両親の問題、とりわけあまりにも酷い父親という背景もあるから強く非難するのもどうかと思うけど、彼女は本質的な意味では「愛」を信用していない。だから彼女はわりと簡単に誰にでも体を開くのだし、そのわりにというのか、だからこそというのか、ろくでもない男(と彼女が見なしてしまう男)としか出会うことができない。ディーンとはまた違った意味での自己防御。でもシンディの気持ちはディーンの気持ち以上によく分かるんだよな〜。そうなんだよ、愛を信用していない人は結局は相手のことも自分のことも傷つけて・・・って、ああいかんいかん。自分に引き寄せちゃいかんのだってば!!泣

というわけで、なるほど、監督が実体験に則しながら10年をかけて練り上げたというだけあって、劇中の人物の実在感というか、リアルさは半端なく、身につまされること甚だしく、その容赦のなさは、冒頭にも書いたとおり、タマフルで言われているとおり、まさに鬼畜の所業。観る前からある程度覚悟はしていたけど、覚悟していた以上に抉られました。ぎゃふん。。

ラスト、エンドロールでとある歌がもう一回かかるところなんて、ほんとに酷いよね。でもあの容赦のないラストシーンにはうっすらとした希望もあるのかも。あの花火は「独立記念日」の花火なんだよね。だとすれば、あのラストシーンは、二人がほんとの意味で自立し、独立しようした、そのスタートの瞬間を映し出しているのかもしれない。

二人の未来に幸あれ。


(追記)
タマフルの放課後ポッドキャストは最高でしたね。橋Pはやっぱり信用できる男!!笑
20分ぐらいの小芝居にも爆笑しました。備忘録的にリンク。
http://www.tbsradio.jp/utamaru/2011/05/da430.html