ウィンターズ・ボーン

静謐な映画でした。しかし静けさのなかにはっきりとした怒りと反骨精神、熱量を感じさせてくれる映画でもあったと思います。

アメリカ社会の深部に隠蔽されている貧困。田舎町を支配する闇の掟。そんな厳しい現実から目を背けることなく、逃避することなく、家族を、幼い弟と妹を守り続ける少女。健気などという言葉は適切でないし、足りてもいないだろう。もっと深い覚悟、深い勇気のある、17歳。

正直にいえば、正しい人の正しい行動を見せつけられるのは自分にはちょっとしんどかったりする。なんで俺はこんなにダメなんだとか、甘えたことを言ってしまいたくなる(いや、実際にtwitterではそんなことばっかり言っちゃってるんだけどさ。自覚はしてます。めんどくさくてすいません。。。)

でも、そんなしんどさもありながら、それでもなお、この映画は素晴らしかった。

ついつい、ひとつ前に観た「サウダーヂ」と比較したくなる。二つの映画は、同じ「貧困」をテーマにしているようでいて、真逆の映画であるかのようにもみえる。現実に向き合う主人公と妄想に逃げ込む主人公。バッドエンドとハッピーエンド(どちらもそんな単純なものではないけど...)。仕上がりの絵としてもある種の下世話さを売りにしている「サウダーヂ」とスマートなセンスの良さを感じさせるこの映画では逆の志向性をもっているとも言えるだろう。でも実は、描いているところは同じなのかもね。

終わりのない貧困(いうまでもありませんが、貧困とは残酷な現実の一部でしかないとも思います)を生き抜くこと。その厳しさ、困難さに寄り添うこと。

どちらが好みかはひとそれぞれでしょうが、どちらも「今」を真摯に捉えることで生まれてきた傑作だと思います。