J1昇格

嬉しいというよりはほっとした感じ。選手や監督もそう言ってるけど、まさにそんな心境だった。現地にいればまたちょっと違った感想になったかもしれないけどね。

僕は典型的な日本人というか、天の邪鬼というか、スポーツに関しては特に判官びいきの傾向があると思う。最初に東京を好きになったのも、J1に上がったばかりの東京が「部活サッカー」と揶揄されながらもチーム全員でひたむきに頑張る姿に胸うたれたところが大きいし(それを抜群のバカセンスで後押しするスタンドもねw)、レアルとやったときとか、ああいう実力とか財力で圧倒的に劣勢なときのほうが燃えるという傾向は否定できず自分の中にあると思う。

だからJ2に落ちた今シーズン、自分の中ではずっと違和感、のようなものがあった。他チームより実力やら財力やらで圧倒的に有利なチームを応援したことがなかったから。もちろん降格した昨年も含め、最近、そうだな〜、ナビスコをとった2004年以降ぐらいかな〜、の東京は、いわゆるチャレンジャーみたいな位置づけのチームではなかったとは思うけど、それでもこれほど他を圧倒するチーム力をもってリーグに挑むのは初めてのことだった。

で、やってみて思ったけど、勝つべくして勝つのって、想像していた以上に難しい。徹底的に守ってくる相手。ほんの少し負けたり勝ちきれなかったり、あるいは勝っても内容がどうたらといらつきはじめるサポーターたち。いらいらは簡単に波及する。求められているレベルが高いからこそのいらいら。とはいえ、それに向き合うのは大層難しいのだ。応援しているだけでも難しいんだから、選手や監督はさぞや難しかっただろう。

J2は魂が磨かれる場所、みたいなことを言ってたのはユキヒコだったよね。

リーグ序盤でつまづいた時期に味わった苦しさはちょっとこれまでに味わった苦しさとは違うものだった。おそらくはその時期に選手同士で行われたという話し合い、コミュニケーションの繰り返しこそが、これまでの東京に欠けていた「何か」を獲得する契機になったのだろう。「つなぐ」という結論。それは戦術的なコンセプトである以上の「何か」であったはずだ。

天皇杯の神戸戦を見ても思ったけど、最近の東京は本当に焦れなくなった。延長120分の最後の最後に決勝点を取りきる力、引いて守る相手を突き崩して5点をもぎとる力、もちろんサッカーだからこれから先も今の力が簡単に持続できるとは思わないけど、それでもなんだろ、このシーズン、このステージを戦ったことで、東京はずっと前から欲し続けていた、「強者のメンタリティ」のようなものを身につけつつあるのかもしれない。魂が磨かれたのかも。ファンも含めてね。

弱いものが強いものに挑む。それは悦楽であると同時に一種のモラトリアムでもある。挑戦者で居続けるという言説はかっこよさげにみえて結局のところ甘えに過ぎない。J2を旅した東京というチーム(そこには勿論、僕を含むファンも含まれている)が長いモラトリアムを抜けて真の意味で大人になろうとしているのか、真価が問われるのは来年だけど、それにしてもなんつうかこう、、、サッカーってほんとに人生みたいですよね!!(大人ってなんじゃらほいってことも含めてねw)

とりあえず今は、まるで我が子のような選手たちの辛く長い旅からの帰還を素直に喜びたいと思う。本当に良かった。為すべきことを成し遂げた君らを心から誇りに思うよ。

あとはあれだ。ボーナスステージが残ってるね。天皇杯。元日に決勝戦が行われる最後の天皇杯。そこでこの旅の成果が本物だったことを証明できれば、これ以上のことはないよね。

僕の大切な友人たちを温かくもてなしてくれたという鳥取の人たちにも感謝しつつ。

2011年。11月19日。ガイナーレ鳥取 1-5 FC東京