イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに

最近観たものを簡単にメモ。

森美術館の「イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに」。韓国の女性アーティスト、イ・ブルの大規模個展。

毎度のことながら森美術館は安心のクオリティ。今回の展覧会も楽しかった。ここの企画っていつも、現代アートファンだけじゃなく、間口が広く開かれている印象がある。といって露骨に「媚びている」という印象でもなく、そのバランスの良さはやっぱり南條さんのパーソナリティに依るところが大きいのだろうなあ。今回も一見「わけわからん」ように見えるけど、ちゃんとポップなところもある(でもって実は政治的にもラディカルなメッセージ性を有する)イ・ブルをもってくるあたりはさすが。

展示もきれいでした。床面を鏡のように仕上げてる部屋はとくにきれいだったな。理想の身体、理想の社会を(それが実現することはきっとないと知りながらあえて)探し続けたイ・ブルが、最後には極めてパーソナルな、一対一の、人と人の関係に帰着していく。それがとても現代的で(311以降の現代という意味ですよ)、「絆」大安売り感のある今の日本に響く、切実かつ共振できるメッセージだと思いました。