TRASHMASTERS「狂おしき怠情」

毎度拝見しているTRASHMASTERS。作、演出の中津留さんは去年に続いて今年も岸田戯曲賞にノミネートされていて、まさに今が一番伸びざかり。役者の皆さんもそれぞれに活躍の場が広がり、明らかに力をつけてきていて。そんな彼らが自信ありげに送り出してきた新作は、、、

今回は医療問題がテーマ。TPPで総崩れになった近未来日本の医療制度を、病院内に渦巻く複雑な人間関係をからませながら描いていていく。たぶん出演の皆さんが自信ありげだったのは、これまでに比べると説明過多な印象が減り、ある意味で役者の演技力を信頼した演出がなされているからなのだと思う。対話劇の中での「間」の多さとか。これまでの中津留さんだったら言葉で全部しゃべっているであろうところを、目線だけで語らせようとしてるのは、僕も好感を持ってみた。

ただ、その分、余計に長く感じたのは事実かな〜。TRASHの舞台が三時間超えなのはもう毎度のことなので、それは覚悟のうえで観にいくわけですが、それにしてもやっぱり長いわ。全体に少々一本調子なところもあるんで、もっとハイテンポにぽんぽん進めるところと、じっくり間をとるところのメリハリがあればな〜と思いながら見てました。

あと、これもTRASHを見る度に書いてる「これはひょっとして映画にした方が面白いのでは?」という印象も、これまで以上に強く感じたかもしれない。間をとる。目線で語る。そのときの演出、演技が、どうやってもカメラを意識したものに見えてしまうんだよね。なんでだろ。理由とか、解決方法とかは良く分からないんだけど。。

それでも。今回が自信作なのはとても良く分かる。特にラストシーンはね。ぐっときたよ。

観てすぐにTwitterに呟いたんだけど、園監督が「頑張れ」って叫んで、中津留さんが「生きてください」と叫ぶ時代なんだなと。まったくもってろくでもない世の中になったもんだと思うけど、そう言うしかない、もうそう言うしかないんだという感覚はとても良く分かります。

そして今回は、その「生きてください」というメッセージを、とある演出を入れることで、音量の大きさではなく、長距離を飛翔し、拡散するメッセージとして、観客に響かせている。役者陣のなかでも圧倒的に身体的な説得力の高いあの人の背中越しに響いてくる声。あれは今を誠実に(学校の独特的な意味じゃなくよ)生きる中津留さんならではの演出だった。

舞台に登場する誰もが決定的な悪人でも善人でもないあたり含め、中津留さんはまた確実に「上手く」なっていると思う。次回作、そして本田劇場(!)での「背水の孤島」の再演も楽しみにしています。