桐島、部活やめるってよ

この秋、唯一映画館で観た映画。周りの評価がすこぶる良く(特にタマフル近辺の熱狂ぶりときたら!!)、気になっていた映画なのですが、なるほど、これは良くできてるな〜。

いろいろな人がものすごい熱量で語りまくっている映画だけど、なかでも興味深かったのはコンバットRECさんが言ってた「俺のなかの前田が、おれのなかの嫌な部分を食殺してくれてる」ってやつ。

僕は高校の頃にはもう「学校」的なヒエラルキー同調圧力からは完全に自由な人だったので(というか、そもそも「学校」の「輪」の中に居たことも、居られたこともないからさ、ははは〜)、RECさんが言う孤立を恐れるがゆえのうんぬんは体験していない。どちらかといえば前田君派だよね。バンドさえやれてればそれで楽しかったし。理解してくれる仲間もいたし。たいした根拠もなく周りを見下してたし(苦笑)。

だからRECさんがいう「苦しい」部分にはあまり感情移入できなかったりする。するんだけど、それでも宏樹君の物語には惹き付けられたな〜。ああいう人、いたよね。というか自分の中にも宏樹はいる。もっといえば、誰の中にも、宏樹はいる。

好きなことが見つけられない。何をやってもこれが本当に自分がやるべきことなのか確信できない。それは、いろいろな意味での幸運にも恵まれ、いまだに自分の好きなことをやり続けている自分でさえ、何度も何度も突き当たってきた疑問だ。町山さんはそれをサルトルの「嘔吐」になぞらえ、「実存的不安」と解説していたけど、哲学や社会学のタームでいえば古典的なアノミー理論も思い出させる。なんでもできるがゆえの、選択肢が豊富なゆえに起きる、アイデンティティの不安。葛藤。アイデンティティといえば、この映画はゴッフマンのドラマツルギー論も思い出させるよね。アイデンティティとは自己決定されるものではなく、実は相互の演技、役割分担によって規定されている。。。

いずれにしても、この映画が「学校」という限定された極小空間の中に極めて普遍的なテーマを凝縮させていることは疑いのない事実だと思う。アイデンティティを巡る葛藤。それはもちろん中学、高校時代特有のものではなく、生きていくうえでずっと付いて回る、とてもやっかいな葛藤だ(「四十にして迷わず」とか言っる人は圧倒的に嘘つきだよな、な!!)

あのラストシーン。宏樹君はどこに向かうのだろうか。
僕は(希望も含めて)彼が桐島に「おれはもう少し野球やってみるよ」と伝えようとしているように見えた。何が使命かなんて誰にも分からない。本当に好きなこと、本当にやるべきことはなんて、誰にも分からない。だったら歩き続けてみるしかないじゃないか。自分に言い聞かせるように、僕はあのシーンをそう観ました。

実は吉田監督の前作、「パーマネント野ばら」も僕は大好きな作品で、この人が映画の中で描くクライマックスってとんでもない破壊力があると思っています。「パーマネント」で小池のお父さんが電柱切り倒してるところを引きで撮った、まるで花火のように火花が飛び散る映像は、自分にとって忘れがたい映像体験のひとつです。ビューティホー!!

この映画をみて「すげえ!」ってなってる人にはぜひ「パーマネント」も観てもらいたいな。菅野美穂のとびきりエロい、手をかぷって噛むシーンも、、、お薦めです!!


(追記)
かすみみたいな女子もいた!!いたよ!!こっちに興味ありそうに見えて、実はやっぱり楽しくてかっこいい奴と付き合ったりするんだよな!!食殺せ!!(怒気を含みながらww)

(追記その2)
貼った予告編みて思い出したけど、一番ひりひりしたのは風助くんの悲痛な叫び。あれは堪えた。堪えるよ〜。