アンドレアス・グルスキー展

この夏の国立新美術館アメリカン・ポップアートアンドレアス・グルスキー。話題の大物、、、とはいえまだまだアートファン以外への浸透度は??なグルスキーを夏休みにぶつける。大型の美術館としてはそれなりに勇気のいる企画なのだと思います。一定以上の集客は見込める企画展と抱き合わせることでボーダーラインはクリアしつつということでしょうが(どちらの展示も読売、TBSと共催のようだし、最初からそういう作戦だったのでしょうね)、印象派!的な鉄板企画や子ども向け企画に逃げなかった美術館の姿勢は応援したい!ということで、さっそく観てまいりました。

「99セント」の圧倒的なインパクトで広く知られるようになったグルスキー。画面を切り裂くような平行。圧倒的な情報量の過剰。あるいは抽象化。強い違和感をもたらす作品群はまた、「写真」とは何かという定義そのものを揺るがしている。

複数の画角の写真を一枚の作品の中に合成したり、撮影後に執拗なまでの色調整を繰り返したり。おそらくは古典的写真ファンにとっては、「写真」と呼ぶことに抵抗のある手法。フクヘン鈴木さんによる「photographを写真と訳した国で彼の作品をみる感慨そして敗北感」というコメントはさすがの慧眼か。そう。グルスキーは真実を切り取ることだけが写真の可能性ではないことを軽やかに実践してみせている。虚構と現実。マクロとミクロ。あらゆる対極を一枚の「写真」に同居させながら、鑑賞者に深遠な思考を促す。

話題の「カミオカンデ」や「バンコク」のシリーズも素晴らしかったが、個人的には衛星写真をもとに海の色だけを徹底的に加工したという「オーシャン」のシリーズがぐっときた。青の深さに加工の痕跡はなく、圧倒的なリアルを感じる。逆にほとんど加工していないはずの陸地部は、どこかつくりもののようだ。映り込む鑑賞者のシルエットまでもが作品の一部に見えてくるのは偶然か。必然か。

図録の出来がとても良いのも好印象。紙質が良いのよ〜。色が良い具合に沈むし、めくり心地も最高です。