アルク/Walking DA・M

好きな舞台女優であり信頼する友人でもある宮地成子が出演しているというので久しぶりのプロトシアターへ。

舞台についてそんなに知識、情報量を持ち合わせない私、正直「アルク」のことも、DA・Mのことも、演出の大橋さんのこともこの日初めて知ったのだが、いやはや恐れ入った。美しかった。

アルク」。コンセプトはこの上なく明快だ。舞台を上を6人のパフォーマーがひたすらに歩く。6人の出自がバラバラであることは一見して分かる。演劇、舞踏、ダンス。身体表現であることでは共通しつつ、それぞれの身体の「癖」は明らかに異なる。しかしそれらの「癖」が、ぎりぎりのところで、しかし最も根本的なところで、不協和音に陥ることなく、ひとつの空間と時間(=つまりは舞台だ)をつくりあげている。屹立する個の意志。その集合体としての社会。舞台は虚構であると同時に現実社会の縮図でもある。そんな当たり前のことを改めて実感させてくれる。分厚く言葉を重ねるのではなく。意味不明な抽象に逃げるのでもなく。ただひたすらに「歩く」ことで、生きることの意味、表現することの意味を表出させていく。

終演後、宮地のとりなしで大橋さんとお話ができたのだが、その言葉はとても興味深かった。構成表の存在、時間の配分、役者に対する意識付け、積み重ねては削ぎ落とす作業。なるほど、こうした緻密な作業の積み重ねが、「歩く」というこれ以上ないシンプルな行為をアートにまで昇華させているのだろう。

それにしても美しかった。身体の美しさ。この厳しく残酷な世界を意志を持って生き抜く(アルク)ことの美しさ。

この舞台に出会えたことがとても嬉しい。