パガニーニ

音響の良い映画館でと思ってたんだけど、ちょうど時間が空いたので新宿武蔵野館で。いやここも悪くはなんだけど、もうちょっとこう、サラウンドとか整ってるところで観たかったかな。それぐらい「音楽」に特化した映画。

この映画はデイヴィット・ギャレットがいなければ企画そのものがありなっただろう。ギャレットの演奏は噂どおり凄まじく、その演奏シーンだけで(タマフル用語でいうところの)5億点取れてしまっている。なかでもイギリスの酒場でのG線だけで引かれるパッセージは凄かった。なんだあれ。どうやってやるの??ロンドンのコンサートの風景は、「若い人々にクラシック音楽を紹介し、生真面目な音楽であるべきクラシックを熱中させるものとして目覚めさせる(公式サイト、ギャレットの紹介文より)」というギャレット自身の夢の体現なのであろう。

だが、音楽以外のところに関しては良くも悪くも凡庸な映画だったと思う。敏腕マネージャーとして暗躍するウルバーニ、音楽的には凡才ながらパガニーニの招聘に文字通り全人生を賭けるワトソン、いかにも如才なく意地悪そうなタイムスの女性記者。それぞれの登場人物、それぞれに色があって、決して悪くはないんだけど、ちょっとオーバーアクト気味というか、類型的すぎるというか、なんかちょっと漫画っぽいんだよね。悪い意味で。

もちろんパガニーニの人生そのものが、まるで出来の悪い漫画のように、馬鹿馬鹿しく、現実味のない騒動に満ち溢れていたんだろうけど、それにしてもパガニーニの孤独が上手に描かれていたとは思えないし、作品のリアリティラインがよくわからん、という感じの映画ではあったと思います。

まあでもね。音楽はほんとに凄いからそれだけでも劇場でみる価値はありますよ。むしろ劇場で見逃したらDVDで観る必要まではない映画とも言えるかな(立派なホームシアターとか持ってる人を除いてね)。ぜひ劇場で。