恐怖分子

イメージ・フォーラムにてエドワード・ヤンが80年代に録った傑作のデジタル・リマスター版を拝見。やっぱり凄かった。

作品のテイストは散文詩的というか、日本でいえばATGを彷彿とさせるもの。50〜60年代のヌーベルバーグがアメリカン・ニューシネマやATGに波及して80年代の台湾に辿り着いた、と考えるのは単純すぎるかもしれないが、極端に省略された台詞、狙い澄まされた構図、入り組んだ構成など、アート色の強さには明らかに上記の系譜を感じさせる。

見る側を強く信頼した省略の美学。とはいえ、映像が語りかける内容は実に饒舌だ。誰のなかにもある孤独。他者を求め合いながらさまよう分子。さまざまな孤独がひそやかな化学反応を起こしあう。その背景にたくさんの視点(社会的視点)を内包しているところがまさにATG的なのだが、その視点の全てがどこか宙を彷徨っているようにも感じられるのがヤンの特質だ。

美しい映画だった。
忘れられないカットがたくさんある映画だった。