電王戦について思うこと

将棋にはまっています。自分で指す方は一向に上達しませんが、NHK杯はもちろん、ニコ生でタイトル戦を見るのが楽しくて楽しくて。

ご多分にもれず電王戦も楽しんでいたのですが、、、最終局は唖然とする結果でしたね。実はこの日、私は出勤する用事がありまして。午前中しかニコ生は見れない予定でした。最終局の一番面白いあたり(中盤のねじりあい)は見れないんだな〜とがっかりしていたので、個人的には終局まで見れてしまったのが嬉しいような悲しいような。。。

色々な人が色々な意見を言ってるのだと思いますが、私もニワカなりにちょっとだけ。

阿久津八段がいわゆる「嵌め手」を使ったことに関しては私は肯定的。プロならば内容としても「魅せる」将棋を指すべきだというのも分かるし、大事な論点だとも思うけど、僕は将棋に限らず、こういう(誤解を招く言い方だけど)小狡いことをやる人は嫌いじゃないです。こういう人がいて、堂々たる本格派もいて、それもこれも個性のひとつかなと。たとえばですが、マラドーナのハンドでのゴールみたいなね。あれは明らかに「反則」だからまた話が違うのだけれど、それでも僕はあのゴールが好きなんです。もちろんあんな狡い奴はプロサッカー選手の風上にもおけない!という価値観もありだと思いますし、当たり前ながら倫理的にはそういう価値観の人のほうが正しい。正しいけど、それだけじゃない、小狡い人がいたっていいじゃないかと思うわけです。

がっかりしたのはむしろ巨瀬さんに対してかな。まずは棋士とコンピューターソフトの対決である以上、開発者は、どんなにつらくても、自分の分身であるソフトが指す将棋に対して責任を負うべきだと思う(そういう意味では、これも批判されたけど、第1局の王手ラッシュはこれは仕方ないと思う)。阿久津八段に対して「2八角」を打って勝ち目はない。ならば棋譜を汚さぬようにという解釈がされているようですが、僕はたとえ一方的になったとしてもソフトが投了するまで指させてほしかったなと思います。もちろんそれはただの残酷ショーなんだけどね。。。(これもサッカーであれだけど、たとえば東京が磐田にフルボッコにされた試合とかさあ、それでもピッチで戦う選手たちに涙しながら必死で応援したよ、おいらは、、、)

記者会見での態度が・・・という意見もよく見かけました。あんなタイミングで記者会見すること自体が酷だよと思いつつも、僕もやっぱり、少なくともあの場で阿久津さんを批判するのは筋違いだと思ったな。貸し出しとか、ソフトの修正ができないことに関して批判するのはまだ分かるけど(とは言ってもそのルールでの勝負を飲んだ時点でもうルールに関する批判はしちゃいけないんだとも思うけどね)。ただ。おそらくはプロの広報もいて、発言内容についてもえらい人と十二分に吟味できたはずの阿久津さんに比べ、巨瀬さんは圧倒的に弱い立場なんだってことも忘れないようにしなければと思いますがね。

電王戦のあるべき姿。を語れれるほど将棋にもコンピューター技術にも詳しくないけど、ただ僕が電王戦に期待してるのは、勝負として面白い将棋を見たいとか、人類には到達しえない完璧な棋譜が見たいといったことではなく(前者だったら名人戦みるし、後者だったらハードの制限を外すべきだし、もっといえばスーパーコンピューターなり量子コンピューターなりを使ってソフト同士でやるべき)、人間とソフトの思考方法の違いとか、それが引き起こす珍妙な出来事とか、さらにいえば、その出来事を通して、人間とは何かを考えることだと思う。だからこそ、私は今回の対局を「人間」の感性で21手で止めてしまったことを、とても残念だと感じるのだと思います(あと、まとめる前にこれだけはどうしても言いたいんだけどさ、第2局の永瀬さん、かっこよかったよね〜。対局としてもお互いへのリスペクトが溢れててさ。間違いなく今シリーズのベストマッチだったよね!!)

現在のレギュレーションに無理があるのは誰もが承知している。あの後味の悪い最終局はそれを良くも悪くもはっきりさせたのだと思います。個人的には大好きなイベントなのでなんとか続いてほしいのですが。。。ドワンゴさんと将棋連盟の知恵に期待したいと思います。