キングスマン

「キックアス」のマシュー・ヴォーン監督、「シングルマン」「英国王のスピーチ」のコリン・ファース主演、スパイアクション映画という時点でもう僕が嫌いなわけなくて。期待どおり、いや期待以上に男の子の夢と過去の名作映画へのリスペクトが詰め込まれた、とにかくめちゃめちゃに楽しい映画だった。

いろいろな映画のオマージュについては私なんぞよりもっと映画に詳しい人たちに譲りたいのだが、なんといってもクライマックスの「史上最高に楽しい花火シーン」は白眉。もちろん元ネタはキューブリックの「博士の異常な愛情」でしょうが、円卓を俯瞰で撮る絵とか、いちいちキノコ雲がでてくるあたりとか、BGMは「時計仕掛けのオレンジ」で使われていた「威風堂々」だったりと、とにかくオマージュが分かりやすい(笑)。ほかにもポスターアートの時点で誰もが思う「キルビル」風の女ヴィランとか、キメはやっぱり「マトリックス」風スーパースローでしょ〜とか、そしてもちろん「007」シリーズへの愛とか。分かりやすすぎるぐらい分かりやすい映画愛に始終微笑みっぱなしだった。

ストーリーの方もいかにもマシュー・ヴォーンでとても好き。階級問題。行きすぎた理想主義の危険性。いけてない男の子といけすかない男の子の対立。そして成長。前半はややだるい印象もある(あと10分削って120分以内に収めてたらもっと大好きだった)が、着るの?まだ着ないの?やっと着たーーー!!からのクライマックスの爽快感はそれこそ「キックアス」のあの爽快感そのまんまで(というか壁ジャンプのセルフオマージュは笑った)、こういうバジェットの映画でも結局「キックアス」のまんまだってことに猛烈に感動した。

というかですね、やっぱりストーリーテリングの地力があるんだなって思うわけですよ。この映画は完全にB級風味で、高級な芸術映画をお好みのシネフィルの皆様にはきっと不評なのでございましょう。バカ映画だもんね。ルックとしては。ストーリーも別に斬新だったり、深みがあったりというわけではないと思う。でもしっかり共感できるテーマが底流にあって、それをきちんと語れる構成があって、説得力のある演出と演技があって、某日本映画(進撃のなんちゃら)が本当にひどい仕上がりだったことを思うと、物語ることへの基礎体力の差というか、映画としての体幹の太さの差に愕然とするのよね。。。

そしてしっかりした体幹があるからこそ、「これをやってみたかったのよ〜!」というひとつひとつのバカシーンが楽しくみれる。教会でのコリン・ファース大暴れ(あれワンカット長回しってほんと??)もすごかったけど、個人的に一番ぐっときたのは世界中のあちらこちらで暴動が勃発するシーン。あれぜったい撮影楽しいよね!!あれこそ映画が大好きな少年の夢だと思う。そしてやっぱり映画が大好きな僕たちは、あのシーンでなぜだか涙が止まらなくなるんだ。

上映終了後、となりのカップルが「なんかいっぱい死んだねー♪」とか言ってたのも最高だった。成長した男の子はモテる、ということも含めて、男の子の、男の子による、男の子の夢を詰め込んだ映画。大好き。