ヒトラーの忘れもの

とりあえず「ヒトラー」とつけとけばキャッチーみたいな邦題はいかがなものか。とはいえ、映画自体はとても厳しく、とても真摯なものでした。
地雷と映画の相性の良さ、とか言うと不謹慎なのですが、「ノーマンズ・ランド」を観たときにも感じたけど、低予算の実写映画で戦争のリアリズムを描くうえで、地雷はとても効果的なモチーフだと思う。この映画でも、最初から最後まで、いつ地雷が爆発するかわからない、その緊張感に息が詰まる。最初の訓練シーンでは爆発の瞬間を見せず、その後に容赦ない人体破壊を見せているのも効果的だったと思う。地雷という兵器の非人道性を容赦なくあぶり出す。そのことで「戦争」という事象の本質的な残酷さ、恐ろしさを照射する。
実質上の主役である軍曹の揺れ動く心理。冒頭から超サディスティックな、復讐に取り憑かれた狭量な人物として描かれる軍曹が、少年たちとの日々を通じて徐々に変化していく。正直、その過程の描き方はやや繊細さにかけるというか、説得力が不足しているように感じた。特にある事件をきっかけに、ようやく生まれはじめていた少年たちとの絆が瓦解し、ひときわ残酷な仕打ちをするあたりはかなり飲み込みにくい。しかしそれもまた、人間の内部というものはそう簡単に整理できるものではないという、脚本、演出の意図なのだろう。
こういう映画がデンマークでつくられるということに、ああ、ヨーロッパだなあと思う。軍曹の上官は、少年たちに地雷処理をさせることの非人道性を承知のうえで、それが命令なのだと強弁する。汚れ役は下士官にまかせる。それはそのまま、ナチスがやったことだ。彼はきっとアウシュビッツやビルケナウの官僚もやれただろう。この映画は、そのことをはっきりと主張している。日本にこのような映画をつくれるときは来るだろうか。