アウトレイジ

かっこよかった!!

冒頭、黒塗りの車とヤクザが居並ぶところをスーッと動いていくあの画面だけですでにビリビリくる。シネマスコープの良さ、映画独特のあの画角の良さを知り尽くしたカメラ。ピンが寄るタイミング、ボケの具合、全てが完璧。あんな高級な映像、やっぱりVシネマではありえないよ。

よくこの映画を語るときに昭和のヤクザ映画が引き合いに出されるみたいだけど、それはあたっているようでちょっと違うようにも思った。えっとですね、僕も70年代ぐらいまでのヤクザ映画をそんなにたくさん観たわけじゃないですけど、今回のアウトレイジのカメラワークのクオリティは、東映ヤクザ映画をはるかに凌ぐレベルだと思いますよ(正しく進化してるという表現の方が適切かな)。寄ったカットにも、引いたカットにも、全てに明確な意図がある。その上で機材の進歩をポジティブに活用できている。単なるノスタルジーで撮った絵じゃないよ、あれは。

確かに東映的なところはたくさんある。特に脚本(これがまた良くできてるんだ!!)はそうだよね。ヤクザ映画の文法―裏切りの多重構造とか、武闘派は損してばかりとか、あとあれね、いい女とエッチした人は必ず死ぬとかね笑―を極めて正しく踏まえてるし、どこまでもドライで、どこまでも熱い。正しい人がでてこない(笑)。

しかし、ここでも単に東映的なるものを踏襲しているだけじゃない。会話劇の軽妙さからは明らかにタラちゃんの臭いがするし、演出のテンポ、バイオレンス描写、画面の切り取り方、全てにおいて、ヤクザ映画の伝統と、良い意味でハリウッド的というか、物語としてのドライブ感、映画としてのスペクタクル感が融合していて、まさに「北野武オリジナル」と呼べる作品になっていると思いました。痛いシーンがちゃんと痛いのも立派。誰もがいうことだろうけど、

まさに、これこそが、「映画」ですよ。

役者陣もすげー良かったな。ぼくの大好きな板谷由夏が相変わらずのエロっぽさを醸し出していたのにもグッときたけど、まあなんたって男性陣、なかでも椎名桔平だよね。かっこよかった〜。

だいたいですね〜、ヤクザ映画で何が一番大事かって、そりゃもーあーた、映画を観終わったボンクラ男子たちがですね〜、ほんとは弱っちいくせにですね、変に肩をいからせて歩いてみたりですね、ちょっとだけ、あまり目立たないようにちょっとだけね、振る舞いが粗雑になったりとかですね〜、そういうことが一番大事なわけですよ!!この映画、間違いなくそうなるでしょ!!もうそれだけで名作ですよ名作!!

鈴木慶一さんの音楽も秀逸。これまでの武映画にはいまひとつ乗り切れなかったという(僕みたいな)人にも、絶対の自信を持って、オススメです。