ネイチャー・センス展

土曜日。森美術館へ。

吉岡徳仁、篠田太郎、栗林隆の三人をフューチャーした企画展。「都市化、近代化の進んだ現代生活において、自然を知覚する潜在的な力(ネイチャー・センス)や日本の自然観について考え、それが現代の美術やデザインにどのように活かされているのかを問いかける」という展覧会の主旨がとても素直に伝わってくる、良質な展覧会だった。

冒頭は吉岡徳仁による「スノー」のインスタレーション。風に舞うフェザーがまるで雪のようにみえる名作は、森美術館の贅沢な空間を得てますます際立つ。「白」がもたらす静謐。氏の作品はすでに見慣れてしまった感があったが、これだけの規模の展示はやはり新鮮で、ミニマルな表現のなかに深い思索を感じさせるのはさすが。光学ガラスをつかった作品「ウォーター・フォール」や「ウォーター・テーブル」の透明感も圧巻。美しさにため息がもれる。

続く篠田太郎氏の作品は、個人的には三人の中ではいまひとつ。かな。自然は人工物と対置されるものではなく、人工物も含めた環境全体を自然と捉える・・・という考え方は面白いと思うが「東京」を捉えた映像作品にしても、「血」の循環をイメージさせる新作のインスタレーションにしてももうひとつという印象を受けた。水滴の波紋を枯山水の庭に見立てた作品も・・ちょっと地味にしすぎかな〜。もう少しサービス精神があっていい。

最後の栗林隆はとても良かった。「境界」を意識させるインスタレーション。冒頭の「虫」の視点を体験する作品は正直にいえばエルネスト・ネトのまるぱくり(ネトが布でやってることを和紙に変えただけ)と思ってしまったが(氏のお父さんが世界的に有名な昆虫写真家である栗林慧であることを思うとちょっと別の感慨が湧いてくるけどね、お父さんが写真で表現しようとした「虫の視界」を表現したインスタレーションなんだもんな・・・)、海面上の土地と海面下の土地を視覚的に表した作品「インゼルン2010」はとても良かった。人間はどのように地球をイメージしているのか。海の下にはどのような世界が広がっているのか。正しいとか間違ってるではなく、そういう想像力そのものが人間を前進させている。この作品を観ていると、そんな感慨が広がっていく。

とにかく全般に、森美術館にしかできない、たいへん贅沢な展覧会という印象が強い。スペースという面でも、作品にかけることができる予算という面でも、本当に贅沢な展覧会。今時ここまで細部にまできっちりとお金(と時間)をかけている展覧会って、そうそうないもんね。しかもそうやって細部まできっちり作りこんでるから、多少テーマが難解であっても間口が狭くなることがありません。誰もが、素直に、「美しさ」に感嘆できる。だから客も入るし、たぶん儲かってもいるんじゃないかな。。

最後にあった三人の蔵書を持ち寄ったという本のコーナーも大変に素晴らしい。私、あの部屋だけで何日でも通いたくなってしまいますもの(笑)。われながら特に自然科学系の本はたくさん読んできたんだな〜とも思いましたがね(自分も読んだことのある本がたくさんあることあること笑)

豊富なレクチャーやワークショップ(http://www.mori.art.museum/contents/sensing_nature/public/main.html)も含め、森美術館は明らかに今の美術館の中では一歩抜けてきたな(ただし「六本木クロッシング」を除く^^)
このあとに予定されている小谷元彦の個展もほんとに楽しみ。

ネイチャー・センス展。おススメですよ!!
http://www.mori.art.museum/contents/sensing_nature/index.html