中沢新一「アースダイバー」

面白かったー。

縄文地図を片手に東京を歩いてみるという試み。洪積層(昔から陸地だった乾いた土地)と沖積層縄文時代に海面が下がるまでは海だった湿った土地)を色分けし、そこに神社や遺跡などの位置をプロットした特性の地図。その地図を片手に東京を歩いてみると縄文の記憶が今も東京に色濃く息づいていることが分かる、というのがこの本のコンセプト。

冒頭の新宿編だけでも極めて興味深い。乾いた土地には伊勢丹高島屋などの高級デパートがあり、「乾いた」資本主義が発達している。対して歌舞伎町などの湿地帯のあとには、肉体に直接的な快楽を与える、文字通り「湿った」商品が売られる。洪積層と沖積層を色分けした地図はそれ自体が極めて興味深いが(かつての東京がこれほど複雑に入り組んだ「海」の中にある都市だったという意味で)、その土地の記憶が見事なまでに今の都市の性格に符号していることに驚愕する。

中沢さんならではの強引に過ぎる解釈もとても楽しい。四谷怪談について、「湿った土地」に暮らす人々の想像力が、高台に暮らす神様のお話を変容させようとした不穏な目論見だったとするあたりは、読んでいてとても興奮した。東京が死者の気配を濃密に感じさせる都市であるのも、普段東京に暮らす一人としてとても納得できる。下町の哲学は実存主義である、ってあたりもいいな〜。皇居をアジールとして解釈しているのも、これからの天皇について、グローバリズムに対する強力な解毒剤として提案するあたりも(強引かもしんないけど笑)僕はとても共感できる。

縄文というテーマが自分の中でどんどんと大きくなっていくのを感じている。杉本博司岡本太郎、そして中沢新一、自分にとって興味のある人たちがことごとく惹きつけられてきた縄文。僕自身は九州(西)の生まれで、どちらかというと弥生以降の農耕文化(大和朝廷がつくりあげた、朝鮮や中国の影響を色濃く受けた文化という意味でもある)に染め抜かれた土地に育ったと思うのだが、だからこそなのか、それとは対照的でさえある東の文化、精神性のようなものに、どんどんと強く惹きつけられている。

中沢さんと坂本龍一による「縄文聖地巡礼」も買ってあるので、次はそれを読んでみよう。