風穴 もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから

国立国際美術館の企画展。これは面白かった!
僕はいわゆるコンセプチュアル・アートってものがあまり得意ではなくて、それこそ森美術館デュシャンとか観てもさっぱりだったのですが、なぜかこの展覧会は楽しかった。
それはなんでかってのをうまく説明できないのですが、ひとつにはコンセプチュアリズムってのは(展覧会のタイトルに沿っていえば)時代の閉塞感とかマンネリズムとかを突き破るための「風穴」として機能するものであり、とすれば、いわゆる同時代性を失ったコンセプチュアリズムや、遠く離れた風土のコンセプチュアリズムよりも、アジアの、同時代のものが面白く見える、ということかもしれません(うーん、違うかなー、よく分かんない)。
個々の作品のなかでは、アラヤー・ラートチャムルーンスック(絶対覚えられないな、この名前w)というタイの作家のビデオインスタレーションが印象に残りました。チェンマイ郊外の村民たちがミレーなどのフランス絵画を鑑賞しながら感想を語る。素朴な風景の中にぽんと置かれた絵画に対し、これまた素朴な人たちが地べたに座り込みながら好き勝手なことを言う。あの人はきっと腰が悪いのよ、とかなんとか。路上観察学会にも似たユーモア。素直すぎる発言にほっこりしつつ、アートにつきまとわる課題―何をありがたがるのか、作品の価値は何によって決定、あるいは生成されるのか―を考えさせられる。
ラストの展示も秀逸ですね。もう終わった展覧会だからネタバレするけど、亀がいるんですよ亀が(笑)。むちゃくちゃでかくてかっこいい亀ね。
普通に解釈すれば、どんなコンセプチュアル・アートも造形の完璧さにおいてはこの亀さんの足下にも及ばない、ってことになるんでしょうか。こういう笑えるニヒリズムは嫌いじゃないです。かなり楽しめた企画展でした。