トゥルー・グリット

早稲田松竹でのコーエン兄弟二本立てを観る。一本目は「勇気ある追跡」のリメイク「トゥルー・グリット」。

主役の女の子の生意気っぷりがとてもいい。しかしこの映画でもっとも強烈な存在感を発揮するのはジェフ・ブリッジス

飲んだくれの保安官は、まさにアメリカ的な正義の価値観を体現する男。すぐに銃をぶっぱなす粗野な態度はリベラルな陪審員たちに悪印象を与えるが、荒野を歩く術を知り尽くし、複数の敵と対峙しても決して怯むことがない。そして、弱いものにはそれとなく、どこまでも優しい。彼といがみ合い、協力しあうテキサスレンジャーを演じたマット・デイモンもまた秀逸。染み付いたエリート意識を老獪な保安官にくじかれてすねる様の似合うこと似合うこと。

アメリカにとっての正義は「復讐」にあるんだってことを改めて思った。正直、ブッシュ以降の(いや、その遥か以前からそうなんだけど、より露骨になったという意味で)アメリカの手前勝手な復讐の論理にはうんざりさせられてきたのだが、あの国が、たとえ一時とはいえ、ブッシュの復讐戦を熱狂的に支持したのも、さもありなんという感じ。法の裁きなんざくそくらえ。復讐は自らの手で成し遂げるのだ!

まあそんなポリティカルにも聞こえてしまう印象はさておき、僕はこの映画がとても気に入りました。現代のアメリカにも脈々と通じるスピリット、その原点が西部開拓時代に培われてきたことがよく分かるし(いつも金ばっかり数えてるじじいとか、フェアなディベートとか、すぐ訴訟するわよって言い出す感じとかも含めてねww)、なにより絵が美しい。

映画のカメラに詳しいわけじゃないけど、おそらくこの映画には(見た目にも古き良き西部劇のあの雰囲気で撮りたかったからだろうけど)、あまり特殊なカメラとかレンズは使われていないんじゃないかな。50ミリだっけ。オーソドックスな画角の映像がとても多くて、だからこそ、フレーミングとか、カットの割り方とかに、コーエン兄弟の特別なセンスを感じました。

ジェフ・ブリッジスマット・デイモンの子ども同士の喧嘩みたいなシーン(パンを放り投げてそれを銃で撃つやつね)は特に好きだったな〜。ジェフがパンを放りなげるところを下からあおったショット。はためくマントと土ぼこり。

アメリカ的なマッチョイズムにはさして共感しない僕でもあのシーンはぐっときた。ムキになる男の子って、洋の東西、古今を問わず、いつもステキだよね^^