なでしこジャパン優勝

女子サッカーにはさして詳しいわけでもないんだけど、さすがにこれは一言書かずにはいられない。なんということでしょう。たった30年前、あれほど手も足もでなかった世界の舞台で日本が優勝する日がくるなんて!!

実力でのアメリカの優位は序盤から明らかだった。攻撃時にはワイドに、守備時はタイトになるフラットな4−4−2。イングランド風のサッカーは退屈なところもあるけど、スピードと体格に勝る相手にあれをやられるとつらい。特に攻撃時に横幅いっぱいに広がって攻めてくるのが嫌な感じ。どうしても選手と選手の距離が遠く、短いパスをつなぎたい日本にとっては我慢の時間が続く。アメリカの「仕上げ」が雑なのと、ポストに救われた前半。あれだけ決定的なチャンスをつくられながらの0−0は上出来、アメリカの足がとまりはじめたときには少しつながる時間もあったとはいえ、意図的に相手を走らせたというよりは偶発的なもの。無理目な縦パスをカットされてはワイドに展開される。冷静にみればかなり辛い展開だった。

後半に入っても大勢は変わらず。そしてついに、僕のタイムラインでは意図的に透けさせたピンクのブラジャーが大変不評だった(笑)なんとかって選手に均衡を破られる。絵に描いたようなカウンターからの失点。ロングボールへの競り合い、ファーストタッチの前に体をぶつけられて勝負あり。一対一はやっぱりつらい。

これはさすがに勝てないかな。でももうここまで頑張ったんだから十分だよ、銀メダルだってすごい快挙だよ、、、なんてモードになりかけてたら、千載一遇のチャンスがやってくる。梢さんが競ったこぼれ球、アメリカがクリアし損ねたところにいたのは女版遠藤こと、宮間。なんという強運。なんという精神力。これはこのまま延長、PKまであるぞ、そこまでいけばもしかして・・・

終盤も押し込まれたもののなんとか耐え抜いて延長へ。しかし延長前半、これまでなんとか押さえてきたワンバックについにやられてしまう。一度ニアに競りにいく素振りを見せてからステップバックでマークを外してのドンピシャヘッド。あれはすごい。どうしても取らせたくなかったエースに取られた。今度こそ日本の気持ちも折れるのかと思いきや・・・この人は折れてなかった。本物だった。澤穂希

宮間からのコーナーキック。ニアに走り込んで相手ディフェンダーより一瞬早くボールに触る。すさまじいスピードでボールがキーパーの脇をすり抜けていく。あれは技術の高さだけでできることじゃない。とスポーツに精神論を持ち込むのが嫌いな僕でさえ思う。17年間にわたって日本の女子サッカーをひっぱってきたプライド。精神力。運。全てを兼ね備えた人にしかとれないゴール。ツイッターで「リアル翼くん」という書き込みを見かけたけど、ほんとにそうだよね。澤は100年に一人の至宝。キングでも神でも姉さんでもなんでもいいけど、とにかく全ての尊敬を澤に捧げるべき(まじで国民栄誉賞ぐらいあげるべきだと思うぞ!)。

試合のなかでもう一点をとる実力はないように見えた。だからひたすら時間が過ぎて、PKになるのを待ち望んでいた。逆にPKになれば負けないんじゃないかという予感もあった。2004年のナビスコカップ決勝を思い出す。そういえばあのときも攻められっぱなしに攻められた120分だった。そこを耐えて耐えて耐え抜いてPKになったときには、もう勝ち負けなんてどうでもいいという気持ちになっていた。というかすでに泣いてたわな(苦笑)。今回もまったく一緒。もう勝ち負けなんてどうでもいい。十分に満足。そしてそう、なぜかそう思えたときのPKは負けないものだ。

PK前の円陣で選手たちに笑顔が見えたのが印象的だった。うわー。ほんとに良いチームなんだなー。これはもう絶対に負けるわけないよ。あの状況で笑顔になれるチームに勝てるチームなんて、いるわけがないよ。泣きながらそう思った。

悲壮感漂う、追いつめられたチームではなく、最後まで笑顔でサッカーを楽しんだチームがワールドカップを制したことを心から嬉しく思う。

なでしこジャパン。名前はいまいちだけど、ほんとに誇らしいチームだ。