路上

前にも書いたことがありますが東京の国立近代美術館では、大型で集客力も高い展覧会とあわせ、美術館の学芸員スタッフが収蔵品を使いながらさっとつくった小型の企画展が同時開催されることが多いです。で、これが毎回面白かったりするわけですが、今回、クレー展と同時開催されたのが「路上」。いうまでもなくケルアックの「路上」にタイトルを借りたものですよね。で、この「路上」がまた面白かった!!
岸田劉生東山魁夷を並べつつ、いわゆる消失点の作り方を解説するような絵画における「道」の効用を語る展示もあれば、ブロードウェイの交差点を魚眼レンズで撮影した奈良原一高のようにひたすらに「道」を記録した作品など、盛りだくさんの内容でした。中でも目玉になっていたのが、銀座中央通りの両側に並ぶ建物を撮影した写真を上下二列に貼り合わせていくことで、中央通りを紙面に再現したアーティストブック。発想の斬新さ、仕上がりの美しさも素晴らしいのですが、なによりもまず、この作品がつくられた1954年の中央通りそのものが興味深いです。資生堂松坂屋、和光、三越松屋、いまも残る老舗、銀座の骨格のようなものは既にできているので、当時の銀座を知らない人でも、ああ、ここは今のアップルストアだよな〜とかいいながら楽しめると思います。
毎度のことながらこのシリーズは解説の小冊子も充実。ほんと、キュレーターの志向がはっきりと感じられる好企画だよな〜。次にはどんなテーマの小企画が観れるのか、大型展とあわせて楽しみにしています。