つきのしろ 劇団黒テント

はじまってしばらくは興味がない話すぎてどうしようと思ったけど、さすがの安定感で魅せてくれます。生バンドの演奏はやっぱり良い。すごく贅沢な観劇体験。無理にはりあげない感じに仕上げているソロパートもすごく良かったし、ラストの全員でのコーラスにもぐっとくる。やっぱり地力あるよな〜と思うんだけど、本についてはなあ。前にみた「花と魚」が本は面白いけど演技が、、、な芝居だったのとは対照的というか。
お話自体は(後で知ったけど)実際に福岡であった連続保険金殺人事件をモチーフにした、とある女たちが周囲の人(主にそれぞれの旦那)を次々に殺害していく話。それぞれに悩みや影を持つ登場人物たちが怪物のような主人公に呑みこまれていくという話の構造自体は「冷たい熱帯魚」と同じで、すごく面白い話になる可能性を秘めてると思うし、黒テントらしいとも思うんだけど、なんだろ、なぜかのめり込んでいけない感じがあって、それはでんでんがいないから、といってしまえば単純すぎるんだけど、それこそ主人公の女性を(まるででんでんのような)もっとエキセントリック(なのにちょっと悲しい)存在にするか、それとも巻き込まれていく側の人たちの事情とか病をもう少し丁寧に掘り下げるか、どちらかは必要だったのではないだろうか。マクガフィンとしての「将軍」もなあ。最初からオチが見えてるのは狙いどおりなんだろうけど、だったらもっと前半からコメディタッチでも良いのでは思ってみたり。今のままだと「女たち」が単に頭の弱い人たちに見えてしまう感じがして、ちょっともったいなかったかも。そんな頭の弱い女たちを、面白おかしく、でも悲しみにはしっかりと寄り添いながら描く演劇なんだろうけどね。
友人の宮地は相変わらず良かったな〜。ひいき目かもしんないけど華がある役者だと思う。彼女のブチギレシーンは、あの劇の中でも有数の見せ場で、僕が行った初日はちょいとその部分のテンポが速すぎる気もしたけど、以降、どんな風に変わっていったのかな。
そんなこんなも含めて「生もの」としての演劇の面白さを存分に満喫できる舞台であることは間違いないんだよね。そこはさすがに黒テントだと素直に思います。たぶん回を重ねるごとに良くなっていくタイプの作品だと思うから、明日の最終日の出来とかを聞くのが楽しみでもあります。
演劇らしい演劇をしっかりやりきっている稀有な劇団。その長い歴史へのリスペクトも含め、今後も見続けていきたいと思います。