背水の孤島

トラッシュマスターズの新作公演。笹塚ファクトリー。

これまでもずっと観てきた「トラッシュマスターズ」。毎度思うことだけど、中都留さんはあえて、社会問題の一番ややこしく、旬なところをドストレートに扱う。今年の公演のテーマはもちろん、震災と原発。頭のプロローグからいきなり「東電」「トヨタ」といった単語が頻発し、観るものを冷や冷やさせる。

ごく近しい現在と、その10年後ぐらいの未来を2幕で語る構成は、最近のトラッシュの定番ともいえるもの。今回は前半の「ごく近しい現在」を描いた前半がとても良くできていた。

被災地の家族とその周囲の人々。ボランティア。テレビ局。それぞれの登場人物が抱える「問題」。ひとつの「家」に場面を絞り、そこで繰り広げられる会話から、切実かつ普遍的なテーマを浮かび上がらせる、ある意味で極めてオーソドックスな「演劇」手法は、秀逸な美術、父親役(手元に資料がなくてお名前がわかりませんが)、龍坐さんをはじめとする役者陣の好演もあり、存分なリアリティを確保している。いつもの大量の文字が並ぶインターミッションで「希望などない。人生は続く」というテロップをみたときは、どすんときたし、相変わらずこの人(中都留さんは)僕と似たようなこと考えてるな〜と思ったりもした。

対して2幕については。。何かちょっと盛り上がり損ねた気がする。

そもそも「現在」と「10年後」を二幕で書くという構成上、「10年後」はよほど注意深く、説得力をもたせないと、ただの荒唐無稽なつくり話になってしまう危険性はつきまとう。そこを突き抜けるには、周到なリサーチが必要なことはもちろん、ある種の「力技」が必要(たとえば前作?前々作では、「最後は愛なんだよ」みたいなメッセージで細かい矛盾をねじ伏せていたと思う)だと思うのだが、今回はちょっとリサーチも力も足りなかったんだじゃないかな。さっぱり終わるのも悪くないけど、喰いきれないというか、腑に落ちない感が残ってしまった。

とはいえね。いつも書いてるからもう飽きたけど、これだけ深刻なテーマに真正面から取り組むトラッシュの姿勢にはいつも感心させられるわけです。例によって語りすぎじゃねとか、演劇より映画にしたほうがいいんじゃねとか、あと半年台本を練り上げて3時間を2時間に圧縮できたら名作になるかもとか、あるいは逆に、これは僕じゃなくて同行してくれた演劇人が言ってたんだけど、3部作にわけたらいいじゃねとか、まあ色々言いたくなることはあるんですけど、そんなあれこれを言いたくなるぐらいに「関心」を持てる舞台なんだよね。

身近な場所に真剣に表現に取り組んでいる仲間がいることのありがたさ。これからもがんばってほしいな。