猿の惑星:創世記(ジェネシス)

久しぶりの映画。ちゃんと面白かったけど、ちょっと喰い足りない感じもあったかな。

あの有名なオチ(第一作のあれね)の前日譚ということで、それこそ誰もが知ってるあの「状況」に向かっていくストーリーでありながら、まったく退屈させることなく、最後まで(ラストシーンのその先まで)物語は疾走する。映像も印象的で、冒頭の森の空撮ではやっぱ3Dってあんまり意味ないよな〜って思えるぐらいの深みを感じさせてくれるし、逆に最先端の映像技術の凄みも存分に効いていて、なかでもアンディ・サーキスの演技をキャプチャーした主人公シーザーの細かい表情、動きから溢れ出す情感には深く感動せざるをえない。シーザーが初めて言葉を発するあのシーン。あれは震えるよね。

ほかにも褒めるところはたくさんあるし、無駄を削ぎ落としたコンパクトな尺も含めてエンターテイメントとして立派だと思うのですが、それでも喰いたりない感じが残ってしまうのはなんでかなと思うと、たぶんそれは「暴力の痛み」みたいなところから、ちょっと逃げてないかいと思うからなんだろうな。最初にシーザーが人間に暴力をふるうシーンでは、力の加減がわからなくて手をかみちぎったりしてて、それはちゃんと痛くて良かったと思うんだけど、そっから先はな〜。

この映画では、人間が決定的な暴力をふるうまで、猿たちは人間を殺さない。それはまあいいと思うんだ。あくまでも猿たちの暴力は人間による理不尽な抑圧から生まれている。それはシリーズ全体を通した軸なんだから、そのままでいい。

でもいざ暴動になってみても、猿側の行為が直接に人の死に関与しないというか、例えばあのビル街での攻防で、尖った鉄柱(門柵?)をパトカーに投げつける。あれはやっぱり人にぶっささるべきなんじゃないかな。エンターテイメントとしてもそうだし、自分が振るった暴力が予想以上に「酷い」痛みをもたらしたとき、それでも彼らは革命を目指すのか。理不尽な抑圧に抗うためならば暴力は許容されうるのか。そういうテーマの深堀りのためにも必要なことなんじゃないかと思いました。まあそれをもろに見せるとレーティングに引っかかるだろうし、僕がそういうところばっかり取り出して描きたがる園さんとか井口さんの映画観すぎなのかもしれませんがね(笑)。

てなわけで僕にとっては5点満点で3.5点の映画だったかな。とても良くできてるけど、自分の中にトラウマになって残る(それこそ第一作みたいにね)ほどではないって感じ??

僕ほど人間が腐ってない人はきっともっと素直に楽しめるのだと思います。僕の好みだけでいえば、もっとエグくても、と思うけど、家族愛、科学の進歩の功罪、経済を優先する価値判断の危うさなど、深みのあるテーマをコンパクトに無理なくまとめて見せた手腕は見事。誰にでも安心してお勧めできる佳作だと思います。