畠山直哉展 ナチュラル・ストーリーズ

楽しみにしていた畠山さんの個展。きっと泣いちゃうなと思ってたけど、やっぱり泣いちゃったな。

畠山さんは陸前高田の出身。いつも一緒に飲んでる人たちには紹介済みだったりすると思うけど、この展覧会に行く人はこの文章を読んでからいくことを強くお薦めします。

http://www.syabi.com/contents/exhibition/topic-1386.html

「あまりにも冷酷な、自然の人間に対する無関心さ」

故郷を丸ごと流されてしまった人がそれを口にすることの重みを私たちもまた噛み締めるべきだと思います。そしてなお「自然の人間に対する無関心さに抗うために、そして今日を生存してゆくために、自然に対して、人間の側から一方的にであっても、意味を産出し付与する行為が、僕たちには必要になります。それを物語行為と呼んで、どこが間違っているでしょうか? 」と語る畠山さんの強さもまた。

写真ってのはほんとに雄弁なメディアだと思います。畠山さんの撮る風景には、豊穣な物語が宿っています。どのような物語を描くかは観る人に委ねられる。そんな一般的な物言いを吹き飛ばしてしまうぐらい、畠山さんの写真からは、問答無用に、彼自身が語ろうとした物語が立ち上がってくると思います。

前半戦、「アトモス」「テリル」などのシリーズ名称が与えられている初期の作品も素晴らしいですが、なんといっても圧巻なのは、破壊されつくした彼の故郷、陸前高田の写真。2002〜2010年に撮られた石巻のスライドショーと対を為すように展示された圧倒的な「風景」。まさに「あまりにも冷酷な」自然の所作。その記録。

あまりネタばれしないほうが良いかもしれませんが、その展示室の前にはとある「無題」の写真が飾られています。展示室を観る前と観た後で、きっとその「無題」の写真の見え方がまったく違ってしまうのではないかと思います(僕は展示室を出てその写真を観たときのことを思い出すだけで泣けて泣けてしかたない。。)

相変わらずというか何というか、写美の照明はひどくて(どうして写真専門の美術館でこんな照明になるの??)、特に前半戦は映り込みが気になって仕方なかったりもするのですが、それでもなお、私はこの展覧会だけはなるべく多くの人に観てほしいと、心からそう思います。

でも、次の一歩をどこに踏み出せばよいというのでしょう?右か左か、前か後ろか。いずれにしろそれは僕たちが決めることです。その一歩を踏み出すためには、たいへんな力が必要でしょうが、その力は、僕たち一人ひとりがあらかじめ抱いている「物語」から、きっと授けられるはずです。そして、僕たちがついに踏み出すとき、その一歩と「自然」との出会いにおいて、別の新しい「物語=歴史」が、そこにはきっと現れるはずです。

12月4日まで。同時開催の「こども情景」も悪くないよ。ほんと、ぜひに。

畠山直哉
Natural Stories ナチュラル・ストーリーズ
会 期: 2011年10月1日 ( 土 ) 〜 12月4日 ( 日 )
休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)
料 金: 一般 700(560)円/学生 600(480)円/中高生・65歳以上 500(400)円 ※10/1(土)都民の日は観覧無料
http://www.syabi.com/contents/exhibition/index-1386.html