チェルフィッチュ「三月の五日間」

「ゾウガメたちのソニックライフ」を観たときは、言葉の感覚の面白さは分からんでもないけど、演劇、舞台としてはつまんね、というのが正直な感想だったのですが、岸田戯曲賞をとって岡田さんが一気に世の中にでてくるきっかけとなったこの作品はさすがのクオリティというか、なるほど、これが「あの」チェルフィッチュなのね、という感想でした。面白かった!!

2003年の3月、イラク戦争の開戦を挟んだ5日間の物語。とるに足らないミニマムな暮らしがどこかで「世界」と結びついていることを、実にさりげなく、実にぎりぎりのバランスで語り続けるこの劇。ゾウガメでもやってた(けど、あの劇では必然性が感じられず、チェルフィッチュの「型」としてやってるようにしか見えなかった)「ふりつけ」についても、なるほど、これは「言葉の身体性」みたいなことがあれほど色々な人から語られたのも分かるわと思ったし、どシンプルな美術、照明、全てに100回以上の上演を重ねてきた自信、テキストそのものに対する自信がみなぎっていて、とても好意的に観ることができた。宮沢さんの「ニュータウン入り口」だったかな、遊園地への客演で観て以来ずっとに気になってる山縣さんとか、もう最高に気持ち悪いよね!!(褒めてます)。あとえっと、役名が思い出せないんだけど、レコード店で出会うファンシー方面にずれてる女子、あの子のパートは最高に愉快だったな。うわー、いる、こういうやつ、俺知ってる、そういう気分になるんだよね。ひとりひとりの登場人物にたいして。

ただ「三月の五日間」で、やりたいテーマと語り口、演出、すべてが奇跡のようにマッチングしてしまっただけに、次の一手が難しいのかも、とは思ったな。先にみた「ゾウガメ」は、僕には「三月」を乗り越えようとしつつ、「三月」の枠のうちにいるようにしか見えなかった。「三月」の呪縛?もし僕が岡田さんの立場だったら、こういうこと言われたら烈火のごとく怒るだろうけど、でもまあ、すごく上手くいった仕事のあとは、次の仕事のハードルがとてつもなく高くなるというのは事実だよね。たいへんだろうな、岡田さん。。

とまれ。なにはともあれ大変に意欲的にプログラムを組んでいるKAATさんのおかげで、ずっと見逃したことを後悔していた「三月」を観ることができたのは素直に嬉しかった。これでやっと、チェルフィッチュ語りの入口には立てたかな(笑)

次は同じKAATで新作をやるんだよね。これも見に行こっと。