ヒミズ

園子温古谷実の「ヒミズ」を撮る。それだけで期待が膨らんだわけで。予告編もたいそう面白そうで。ハードルをあげすぎた、のかもしれないけど、僕は乗れなかったな。

端的にいって鈍重だと思う。前半は特に辛かった。とにかくひとつひとつの演出がくどい。あの原作の重苦しくもドライな世界観を園さんに期待したわけではないけど、それにしても台詞も仕草も、そこからでてくる人物描写に対しても「くどい」という印象しか残らなかった。震災を絡めてるのもな〜。タマフル用語でいうリアリティラインを曖昧にしてると思います。世の中ひどい親はいっぱいいるけど(僕もそのひとりかもしれないけど)、やっぱり面と向かって子どもに「お前いらないんだよ」とか言う奴はあんまりいないわけで、そういう、ある種、物語の中でこそリアリティを持てる可能性があったキャラクターが、あの被災地の絵(圧倒的な現実!)と重なることで、リアリティを持ち損ねているように思った。必死に優しくしようとしてるのにどうしても上手くいかなくて、なぜだって悩んだ末に実は「お前いらない」と思ってしまっている自分に気付いて、、、みたいな話ならまだ分かるけど、最初から最後まで単にひどい人だもんね。今回の親たち。浅くて一面的。なのにくどい。二階堂ふみもなあ。確かに熱演ですよ。でも全然好きになれなかったな〜。ルックスがあんまり好みじゃないというのも大きいけど、ああやっていきなり土足で壁を踏み越えてくるような女は大の苦手なんです。まあそれは原作でもそうだったかもしれんけどな。

まあ他にも言いたいことはたくさんあるけど、なによりも気になったのは、園さん自身が「園スタイル」の呪縛にとらわれてしまってないかいってことかな〜。クラシックと詩のリフレイン、キャンドル、女の子が男の子にのしかかっての長口上、愛のむきだし以来、毎回毎回、同じ演出が繰り返されていて、まあそれは「スタイル」ともいえるかもしれないけど、今回はこれまでの園映画の演者さんたちが勢揃いみたいなキャスティングだったこともあって、その定番感がノイズになってしまったと思います。またこれっすか、みたいな。。。

そういえばこの映画、いつものあれ、「A SONO SION MOVIE」っていうあの堂々たる墨字が無かったよね。あれ好きなんだけどな〜。これは俺の表現だ!っていう気概が見えて。単に入れる場所がなかったのか、原作物だから入れなかったのか。意図は分からないけど、ひょっとしたら園さん自身も定着化しすぎた感のある「園スタイル」からどうやって抜け出していいのか分からなくってるのかも、とか思ってしまいました。

ただ!!あのラスト!!ネタバレになるから言えないけど、あのラストは僕はありだと思います。いま、ヒミズを撮るのであればラストはああせざるを得ないってのはすげえわかる!!そこが園さんのいいところだと思うし!!

園さんは好きな監督さん。特に「愛のむきだし」は僕にとっては迷わずオールタイムベストに入れるほど好きな作品で、だからこそ園さんにはもっともっと先までいってほしいな〜と思っています。生意気なことばかりいってすいません。今回は乗れなかったけど、次作もまた必ず見に行きます。