宇宙人ポール

あの「ホットファズ」のサイモン・ペッグニック・フロストが(エドガー・ライトではなく)外部から監督を招聘して撮ったという本作。脚本はサイモンとニックのコンビらしいからまあ当然といえば当然だけど、「ホットファズ」同様、えー、あえてこういう言い方にしますが「こっち側」の人たちに対する愛情に溢れまくった、大変楽しい映画でありました。

映画の中に埋め込まれている幾多のオマージュについてはもっと詳しい人に譲りたいですが、それを置くにしても、彼らがつくる映画には映画という表現形態に対する深い信頼があると思うんですよ。三幕構成、伏線とその回収。友情、恋、冒険。キャストやフックになるテーマがアレなのでカルト映画として扱われるのも致し方ないことでしょうが、映画としてはやってることは、実はとてもオーソドックスなこと。あえてエンターテイメントの王道を行く。なぜならそれが好きだから。映画が好きだから。そういう潔さがスクリーンにほとばしっていて、その溢れんばかりの映画愛にぐっと来てしまうんですよね。僕は。

いかにもイギリス人らしい、ちりちりとした社会風刺も健在。あれがスパイスになってるのがまたいいんだよね〜。宇宙人の造形やキャラクターがバカすぎるとか、ストーリーが全体的に漫画っぽすぎるとか、自分では頭がいいつもりになってる高尚な映画ファンの皆々様が言いそうな突っ込みどころもたくさんある映画ですが、そんなんわざとやってるに決まってんだろ、バカになれないやつがバカをバカにするな、ということで、私にとってはテンポよく安心して楽しめる、実に映画らしい映画でありました。おすすめです。