十七戦地「百年の雪」

こちらは土曜日のマチネで。

前作の「花と魚」が、えっとなんだっけ、新人の戯曲の賞、そうそう第17回劇作家協会新人戯曲賞(ググった)を受賞したということで、こちらもとても力のある作家さんが作、演出を手がけている劇団。で、今回も「花と魚」同様に、とても好きな「本」でありました。

SFということになってるけど、正直それはまあどうでもよくて(というかいわゆるハードSFのような、科学技術的にありえそうな感じとか、科学技術が及ぼす何かがテーマになっているとか、そういうの期待しちゃだめ(笑))、要は三代記、というか四代記でした。世代が入れ替わりながらも受け継がれていく業やキャラクター、そのなかで毎回同じようでいて、少しずつ書き換えられていく人と人の関係性。物語の豊穣さ、タイトルからも、どこか「百年の孤独」を思い出させる、四代記。

で、僕はこういう○代記的な構成ってのが大好物でしてね。今回の本は良くできてたと思うな〜。本作では大きくは4つの家族が3世代〜4世代にわたって描かれていて、もう登場人物の多さだけでもえらいことになってますが、それぞれのキャラクターになんともいえない実在感があって、ほんのちょっとの台詞で、ああ、あの人はあの人の子孫なのかと納得さえちゃう仕掛けとか、ほんとに良くできてたと思うわ〜。

ただ、前の「花と魚」のときも書いたけど、やりたいこととやれることのバランスが取れてないというか、「本」としては面白いんだけど、演劇としてはまだまだ力が足りてないのではと感じるところはある。時間不足で演出まで行き着いてないのか、あるいは単に役者の(現段階での)身体的説得力の問題なのか。あと、これはひとつ前に書いたTRASHとも共通してるけど、どうしてもこれが演劇でなきゃいけない感じがしないんだよね〜。映画で観たくなるというか。。

今年は年明け早々に大当たりの演劇やダンスを観てしまって(黒テントの「青べか先生」とか、パパタラの「島」とか)、少し僕が求めている水準があがりすぎてるのかもしれません。でもそういうのと比較しないとね。かえって失礼だよね。青べか観たときは、なるほどこれが演劇なんだと思ったもん。たしかにこれは演劇じゃなきゃできない。演劇的なエンターテイメントって、物語る身体って、こういうことなんだと思った。
そこにこの劇団が比肩しうるかというと、まだそこまではというのが正直な感想だけど、前作ではたまたま僕が観た回に絶不調であまり印象がよくなかった主催の北川くんはじめ、もっともっと高いところを求めて劇に取り組んでることはがっつり伝わってくるからね、今後に更に期待したいと思います。偉そうに言ってますけど、単純に好きだよ、この劇団。

あと、どうしても書き残しておきたいのがラストなんだよね。あれ、すげえ良かった。最近、妹が子どもを産んだこともあって、あの感じ、世代が変わりながらも受けつがれていく何か、的な物語にはものすごくぐっときてしまう(最近カーネーションに夢中なのもこれに尽きる!!笑)。ちょっとテクニカルにすぎるかしらん??と思わなくもない構成を見事に着地させ、ほっこりさせてくれるラスト。柳井さんだっけ、ほんとにセンスあるよな〜、この作家さん。

こちらの劇団も前作の「花と魚」の再演が決まってるのかな。あれも本の良さをまだまだ演じきれていない印象が残っているので、再演でどこまで伸びてるか、とても楽しみです。