pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち

あのピナ・バウシュをあのヴィム・ヴェンダースが撮る、ということで随分前から楽しみにしていた作品。

予告編でみたときから思っていたけど、2009年に亡くなったピナの生前を追ったドキュメンタリーではなく(そういう部分もあるにはあるけど大半は)、ピナとヴェンダースのコラボレーションによるアート作品、パフォーミング・アーツの作品でありました。カフェ・ミュラー春の祭典、フルムーンなど、ピナが作演した名作の記録フィルムも使われているが、今回はそれに加え、上の三作品をヴッパタールのオペラハウスに観客を入れたライブとして、ノーカットで収録したという。ヴェンダースは20年以上前からピナと(ピナの、ではなくピナと、ですよ)映画を撮りたいと願っていたようだが、それを映画として表現するための適切な手段を思いつくことができずにいたらしい。3Dに出会ったとき、はじめてこれなら舞台の奥行き、ダンサーの肉体の躍動感をあますところなく伝えられると確信したそうで、なるほど、これはこれまでに観てきた3Dに比較すると、3Dでなければいけない必然性というか、3Dで何を伝えようとしているのかははっきりとしていたと思う。画面に観客席を少しかぶせることで映画館と舞台をひとつの空間にしようとした(映画館の客席と舞台の客席が連続し、その奥に舞台があるように見えるんですね)のは、確かに3Dならでは表現だろう。

しかし僕個人がそれよりもっとぐっときてしまうのが―おそらくはこれもヴェンダースとピナ双方のアイデアなのだろうが―劇場から外に飛び出してのソロパートなんですよね。ヴィジュアル・アートでは美術館を飛び出して街中にアートを展開するという文脈は昔からあるし、ダンスや演劇の分野でもそうした実験はあちらこちらで始まってるけど、少なくとも僕は、これほどまでに「風景」と「肉体」が美しく調和した作品を観たことがなかったし、それはやはり、ロードムービーから出発したヴェンダースならではというか、ヴェンダースとピナ、あるいはヴッパタール舞踏団のとびきり上質なコラボレーションが成立していると思います。ひとつひとつの踊りにちゃんとピナがいて。泣けてきてしまう。。

ただ!

これはもう観た直後にTwitterにさんざん書いたけど、バルト9の3Dはもうほんとに最悪!!最悪だよ!!
XpanDだっけ?? 重いし暗い、のにはいい加減慣れてきましたが(それだってどうかと思うけどさ)、シャッター方式だからなのかなんなのか、早い動きだとコマ落ちしてるように見えてしまうんだよね。昔のアニメみたいに。あれシャッターが追いついていけてないからだとしか思えないけど、もしそうだとしたらほんとに最悪!!せっかく意図を持って3Dを採用したヴェンダースもがっかりでしょ〜。許せんな〜。あの眼鏡は。。あれだったら普通に35mのフィルムのほうがずっといいよ。。

東京だと有楽町でもやってるんだよね。調べてみてもし眼鏡の方式が違うようだったらそちらも観てみようかしら。基本的には新しい技術大好きなワタクシなのですが、つくづく映画の3Dはまだまだダメだな〜と思ったのでした。