かぐや姫の物語

日本アニメのひとつの到達点という評価は嘘じゃない。

高畑さんのアニメは凄いと思うけど、どこか苦手な感じもある。ちょっと説教っぽいというかね。一番大事なテーマを台詞で喋ってしまうあたりとか。。。どうしても乗り切れないところがあるのも正直なところ。。。

この映画にもそんな僕の苦手な部分はあったと思う。観た直後に「僕は『悪の法則』のほうが好きです」と呟いてしまったのもそんな所以。でもこの映画には、そんな苦手意識を払拭してあまりある快楽があった。アニメーションだけが持つ気持さ良さ。線が動きだすあの瞬間のために、いったいどれだけの労力が必要だったのか。想像することさえ難しいが、とてつもない技術、胆力が必要であることは誰の目にも明らかだ。しかもそれがただ単なる技術ではなく、ストーリーと分ち難く結びつく。たけのこが走り出す瞬間の気持ちよさ。あの飛翔シーンの気持ちよさ。思い返すたびにこの映画がどんどん好きになる。

現代美術館での個展にもなった男鹿さんの美術にはとくに感じるところが多かった。あの草木の描写。花の描写。あの描写だけでも、この世は生きるに値する。そんなこの映画の主題が見事に表現されていたと思う。