遅ればせながら

NNNドキュメント'14 反骨のドキュメンタリスト 〜大島渚 『忘れられた皇軍』という衝撃」を観た。凄まじい。

CMを挟まず全編ノーカットで放送された「忘れられた皇軍」の凄まじさは言うまでもなく。執拗なクルーズアップ。アート・ブレーキーのジャズ。緊張感あふれる編集。短くセンテンスで突き刺すナレーション。全編に漲る、叩き付けるような怒り。そして大島は問いかける。「今この人たちは何も与えられていない。私たちは何も与えていない。日本人たちよ。これでいいのだろうか。これで、いいのだろうか」。

しかもこのドキュメンタリーはそこで終わらない。いまを生きる表現者としての、テレビをつくる側としての自分たち自身に「私たちはこれでいいのだろうか」と問いかける。僕はこれまで是枝は嫌いと公言してきたけど、それは今日限り撤回しなければならない。というか是枝作品が好きかどうかはおくとして、彼がこの番組に語った言葉、表現に対する姿勢には強い共感を覚えざるをえない。彼は「いまもし、大島監督が生きていたら、いまのテレビに一体なんと言うだろうか」というナレーションの問いに答えてこういう。

「ぐだぐだ言ってないでとにかくつくれって言われますよ。」

そうだ。その通りだ。特定秘密保護法NHK経営委員会の人事、会長人事。報道まわり、表現に携わる人たちにとっては不愉快な、不気味なニュースばかりが増えている昨今。でもそんなことで何かを諦めてる場合じゃない。うんざりしてる場合じゃない。とにかくつくれ。作り続けろ。こんな時代だからこそ。大島さんならそう言うに違いない。

この番組を制作したプロデューサー、ディレクター、スタッフの皆さまに深い感謝と尊敬を捧げます。元気でた。