虚像の礎/トラッシュマスターズ

座・高円寺にて。長く見続けてきた劇団。とはいえ前作ははっきりと苦手だったので今回はどうかしらと、不安なような、かえって楽しみなような、不思議な気持ちで拝見したのですが、良くも悪くもトラッシュはトラッシュだなと。

これまでのトラッシュの「型」をあえて崩し、新しい手法に挑戦していたことには素直に拍手を送りたい。分かりやすいところでは幕間の超高速ナレーションと字幕がなかったね。演出のテンポもゆっくりめ、台詞自体もゆっくり読むが、それ以上に台詞と台詞の「間」が長めにとられており、ひとつひとつの言葉の意味をじっくり考えさせようとする意図が感じられる。

ただ、この新しい「型」を役者たちが消化しきれていない印象もある。これまで以上に棒読み、とまでは言わないまでも、台詞が体に染みていないというか、身体が発する言葉というより、本を読んでいるという印象が残ってしまう。

そしてこれはトラッシュのいつもの特長だけど、台詞の量はとても多く、大事なところは全部しゃべるというか、劇作を通じて伝えたい主張の中心が、いかにも主題ですよーとばかりに呈示される。今回は特に、主人公の劇作家(もちろん作・演出である中津留さんの分身なのだろう)が終始「正しい」言葉を発する役割を担っており、彼がさまざまな登場人物の心情や行動の意味を「解説」してしまうので、せっかく間を重視した、考えさせる演出をやっているわりに解釈の仕方には幅を持たせていないというか、ちょっと啓蒙的になりすぎているように思えた。それはやっぱり、僕の好みとは異なる部分。

ただ、好みかどうかはともかく、このまっすぐさがトラッシュなのだとも思う。そして中津留さんの興味関心と僕の興味関心は、相変わらずとても近いところにあると思う。

終演後、劇団員のひとりと高円寺で飲んだのだが、そのときにも紹介した動画をリンクする。

TEDにおける鮮烈なスピーチで世界中の話題をさらったJR。彼がそのスピーチからの一年を改めてスピーチしたものだが、その最後に彼はこういっている。

ここで はじめの問いに戻りましょう。 「アートは世界を変えられるか?」 1年では たぶん無理です。ほんのはじまりに過ぎません。

ただ 質問を変える必要があるかもしれません。 アートは 人生を変えられるか?

今年見てきた限り 答えはイエス

そしてこれはまだ はじめの一歩なんです。

一緒に世界をひっくり返しましょう。

ありがとう