銀河鉄道の夜/小池博史ブリッジプロジェクト

池袋あうるすぽっとにて。

小池さんの舞台を知ったのはパパ・タラフラマが解散を発表したころ。「島ーisland」をみて衝撃をうけ、「ship in the view」にも感動した。コンテンポラリーダンスのようであり演劇のようでもある独特なスタイル。身体表現、身体性への強いこだわりからもパフォーミング・アーツという言葉が一番なじむだろうか。

今回の『銀河鉄道の夜』も、予想はしていたが原作を追うようなものではない。あくまでも小池さん(+その他出演者)にとっての宮沢賢治の世界を身体表現に置き換えたもの。抽象的といえば抽象的なんだけど、今回はテーマや物語としての構造はとても分かりやすく整理されていたように思う。トラフの舞台美術もさすがの切れ味で、物語世界を浮遊する身体と、物語を読む身体が印象的な線路のビジュアルでつながる、洗練された表現になりえていたと思う(余談だがこの日のトークに現れた鈴木康広はあれが横断歩道に見えたそうで、まったくもってこいつばかりは本物の宇宙人だ、大好きだ)。

音楽も踊りもとても良かったが、パパ・タラフラマに比べると、よりジャンル横断的になっているのが特長だろうか。パパタラでは圧倒的な身体的説得力を持つ松島さんや、えっと名前が出てこないけど女性のダンサーが抜群の存在感を放っていたが、今回の出演者は、同じダンスでもかなり系統が異なる人をあえてまぜこぜに起用している印象。正直、立ち姿の美しさとか、そういった意味での完成度は松島さんたちに遠く及ばないように思うが、異なる「くせ」を持つ身体表現者たちに「ブリッジ」をかけ、ひとつの世界をきっちりつくりきるのはさすがだと思った。

中でも能楽のおじいちゃんは圧巻。71歳ということだが、その年齢であれだけ動いて、それでもあのぶれない発声ができるというのはどういうことなのだろう。伝統芸能の世界で鍛え上げてきた人の実力をまざまざと見せつけられた。ジーンズもおしゃれだったし!!

コンテンポラリーは難解。ある意味その通りだし、小池さんの舞台もさっぱりな人にはさっぱりだろうが、僕はやっぱりこういう余白があるものが好き。人間の身体に対する信頼、想像力に対する信頼が強く感じられるから。

そしてこういう余白があるからこそ僕は、考える。考える。