ジャック・タチ「プレイタイム」

イメージフォーラムジャック・タチ特集。「僕の伯父さん」も久しぶりに見たかったけど、唯一タイミングがあったのが未見のままになっていた大作「プレイタイム」。というわけで、観てまいりました。立ち見だったよ。わーーーー。

映画はとても楽しかった。馬鹿みたいに予算をかけてしまって、そのわりに興行的には大こけして、タチを破産に追い込んだ作品と言われていますが、確かにこれは無駄に金かかってるわ^^

モダニズムへの辛辣な批判を温かいユーモアに包み込むタチの職人芸。タチの類い稀なるセンスの良さは明白なんだけど、これを巨大セットをつくって全部70ミリで撮るってのは完全に頭おかしいよね。いかにもフランス人らしい社会批評を含むとはいえ、あくまでもギャグ映画だからね、これ。ギャグのためにそこまでやるの??って(苦笑)

でも僕はこういう頭のおかしい映画、頭のおかしいクリエイターが大好物なのです。画面全体にみなぎる「俺はこういう絵が撮りたいんじゃーーー」という欲求の美しさはどうだ!! 容赦なく金をかけ、容赦なく理想(笑い)を追求する。かつて80年代には日本にもそんな風潮があったかもしれませんが、日本に限らずいまは難しいでしょうね。こういう作品は。もっと気楽に撮れるようになってるからね。良くも悪くも。

ただ。映画の一コマ一コマにかけた労力は、決して嘘をつかないとも思うのです。あの横長の画面にはきちんと意図がある。広角でも。寄りの絵でも。徹底的に計算しつくされた構図。そしてそのビシッときまった構図のなかで繰り広げられる、これまたきっちり計算された役者の挙動のひとつひとつ。その絶妙なアンサンブルはまるでオーケストラ。その無駄な贅沢っぷりに、僕はとても幸せな気分になってしまうのです。

楽しかったーーー!!
映画をみてこんなに楽しい気分になれたのは久しぶりな気がします。こんな映画を残してくれたタチに。最大級の賛辞を。