チームが壊れる瞬間

スペインとオランダの試合は長年記憶にも記録にも残るものになるだろう。2010年のワールドカップ、2012年のユーロを連続で制した、誰の目にも楽しく美しいあのサッカーがいとも簡単に崩壊していく姿を世界中の人が目撃した。

スペインに全盛期ほどの輝きがないことは明らかだった。シャビとイニエスタ。二人の天才は健在なものの、せめてもう一人、そこに絡む選手がいないことにはヨーロッパの強豪相手にパスを回し続けることは不可能だ。ましてや徹底的に戦術的に戦うファンハールのオランダにおいてをや。

オランダの戦略は極めて明確だった。スナイデルロッベンファンペルシー。それぞれに特徴をもつ3人の天才「だけ」に攻撃をまかせ、5バックとダブルボランチを絡めながら、広く、浅く、守る。幾多のチームが試みたスペイン対策。もちろんその徹底ぶりにおいてオランダが他のチームを凌駕したことも確かだろう。しかしそれ以上に、どんなに守られても巧みにトライアングルを作り続けてきたスペインが、その特徴を発揮できなかったことを指摘するべきだ。あとワンピースの不在。それだけで黄金時代を迎える前の、あの上手くても怖くないスペインが甦ってしまう。肉弾戦も辞さないオランダに絡めとられるパス。そこからの超高速カウンター。前半終了間際のフライングヘッドを皮切りに次々に失点していくスペイン。後半途中からは長く頂点に居続けたことの反動かのように、集中力を失い、戦う意志までをも放棄してしまう。文字通りの醜態。5失点。

サッカーは本当に恐ろしい。あれほど美しいプレーを見せていたチームが一瞬で崩壊する。奢れるものは久しからず。古い格言を持ち出すまでもなく、スペインが「下り坂」にいることは感じていた。相変わらずスペインを優勝候補にあげる声には疑問を覚えていた。しかしこれほどまでに急激な崩壊もまた予想できていなかった。力なくうつむくシャビなんてみたくなかった。。。

本当に大好きだったスペインのサッカーがこのまま終わってしまうとは思いたくない。思いたくないが、、、次節は難敵、チリ。現実としてスペインのグループリーグ突破は極めて難しいというべきだろう。サッカーというスポーツの残酷さに改めて震撼する試合だった。