イーダ

アンジェイ・ワイダロマン・ポランスキーらの系譜を受け継ぐ、いかにもポーランド派の映画。

モノクロ、スタンダードサイズ、徹底的にスタイリッシュな構図。全てがポーランド派を彷彿とさせる。しかしそれは単なるノスタルジーではない。この映画のテーマにとって必然性があってのもの。だからこそ、この映画はとてつもなく美しい。

ひとつひとつの構図に込められた意味の深さに震撼する。真っ白な雪の中を歩きはじめた少女は、深く暗い、厳しい森を旅する。その歩みは、60年代のポーランドの苦悩そのものの縮図になっている(だからこそ、この映画は、いかにもポーランド派、のルックである必要があるのだ)。

東欧好き、なかでもポーランドの映画や音楽がどうにも好きな私にとっては宝物のような映画。ポーランドの厳しい歴史は、とてつもなく美しい芸術を生みだし続けている。

ラストシーン。きりっと前を向き歩く少女のカットに涙がこぼれた。