神々のたそがれ

これほど難解な映画も久しぶり。。。ディテールのディテールまで監督の美意識が徹底された映像の美しさはもちろん初見でもわかるのだが、ストーリーに関しては正直、初見ではちんぷんかんぷんという人のほうが多いではないだろうか。だいたい地球人と、えっとなんだっけ、この惑星の人の区別も分からないし、神聖軍団はともなく、灰色隊にいたっては最後の最後までいったい誰が灰色隊なのやら理解できないし、主人公を含む登場人物の行動原理も意味不明だし、一見しただけでは到達できない深みがあることと単に分かり難いことは別なんだよ!!難解「風」にしとけばポストモダンが喜ぶとか思うなよ!!とかディスりたくなるんだけど、なにか強烈にひっかかるところがある映画であることもまた確かで。。。

で、あまりにもよくわからないのでパンフレットを買って、まずはあらすじの解説を読んでみました。なるほど、大筋は理解できたような気がする。というか意外とちゃんと観れてたのかも、おれ(笑)

そう、お話の筋や辻褄は極めて分かり難いのだが、実はこの映画が伝えているテーマ自体はそんなに難しいものじゃないのかもしれません。どれだけ個人がもがいてみても、たとえ異世界においても、結局のところ繰り返されてしまう愚行。度し難い人間の業に対する(ヴォネガット風にいえば)「やれやれ」という感覚。それを異惑星(というよりは中世)を舞台として描いているだけで、映画全体としてはいわゆる伝統的なディストピア映画(フィクショナルな舞台設定による社会批判)を踏襲したものなんですよね。

ただ、この映画がただものじゃないのは、それをものすごい省略と執着を組み合わせて描いているところ。台詞や説明は最小限まで(というか一般観客の理解のために最小限必要と思われる限度を超えて)刈り込む一方で、物語の背景となる世界観や、この世界を象徴させる美術、小物などは過剰なほどに、粘着的に作り込まれれている。それだけとればマッドマックスがやってることと共通する部分もあり、その執念深いディテールの作り込みこそが、ただ難解なふりをしている映画とこの映画を決定的に差別するものになっていると思います。

もう少し若く時間があるころに観ていれば、まずは原作を読んで、過去作も観てと、それこそ立花隆さんみたいな読み込みにもチャレンジしたいところなのですが、残念ながらそこまでの時間を取るのは難しく。。。でもパンフレットはもう少し丁寧に読んでみようかな。そして不本意ながらやっぱり飲み屋とかで語っちゃうんだろうなあ、この映画の凄さについて。