安全保障法案の可決を受けて

内閣法制局人事、憲法改正から解釈改憲への転換。必要な布石を着々と打ちながら最後は露骨に数で押し切る。見事な手際でございました。安倍ちゃんは週末からアメリカ行くんだっけ。いいお土産ができてよかったですね(しね)

そもそもは(あまりにもいびつであり、最高裁によって違憲とされている選挙制度の下とはいえ)あんなにひどい改憲案を掲げていた自民党(と公明党)を勝たせてしまったことがこの問題の(直接的な)原因。とはいえ私たちはあくまでも憲法の範囲内においてのみ彼らに施政を委ねているのであって、憲法を無視する権利までを政権に与えているわけではない。賛成派のみなさんには安全保障上どうしても集団的自衛権が必要だというのなら(私はそう思わないが)、どうやっても理が通らない解釈改憲ではなく、正々堂々と憲法改正に挑んでいただきたい。あるいはアメリカ様の命令に従うことだけが日本の安全保障の道なのだからアメリカ様の要請には従うべきなんです、武器輸出解禁も見据えている経済界も賛成していますと正直に言うとか。どっちもできないから四苦八苦して矛盾だらけの答弁を繰り返すんだろうけど。。。

(ちなみに私自身は個別的自衛権は必要だと考えているほうでして、そのためにはあまりにも繊細にすぎるこれまでの憲法解釈=安倍内閣閣議決定による解釈変更まで長年にわたって採用されてきた憲法解釈=自衛隊の存在を23条を論拠に肯定するものを改め、自衛隊を合憲化するための憲法改正を行うというのなら、それはありだと思っています、ただしそのときに自衛隊は個別的自衛権のみを行使することを明文化したい)

しかし愚痴ってばかりもいられない。SEALDsの台頭や民主党福山議員の演説、そしてあの共産党による選挙協力の提案など、色々とポジティブな要素もあったとは思う。残念ながらこの問題が実際に次の選挙に影響する(自民党が再び下野する)可能性は低いだろうが、少なくとも私自身にとっては、立憲主義とは何かを改めて考える良い機会になった。

憲法審査会で集団的自衛権違憲と断じて話題になった長谷部恭男さんの言葉は特に強く印象に残っている。立憲主義とは多様な価値観をもつ人たちが共存していくための発明なのだと。長谷部さんは憲法および立憲主義の意義についてそう語っている。その言葉は安保法制のことのみならず、いま私たちが考えなければならないいくつもの課題に対する思考の出発点になるように思う。