恋人たち

樋口監督の新作となれば観ないわけにはいかないわけですが、秋の繁忙期にかぶってしまい、年末ぎりぎりでやっと鑑賞。なるほどねえ、これは絶賛されるわけだ。

とにかくオーディションで選ばれたという3人の主役が素晴らしすぎる。当て書きの脚本。脇を固める実力者たち。そして何より樋口さんの演出。いくら好条件が重なっているとはいえ、これほど説得力のある演技はなかなかできるものではない。主人公の圧倒的な独白。ちょっとひつこい、、、とは思ったけど、にしてもあれは映画史に残る名演だと思う。最初の「サイタマノラッパー」で名優駒木根さんがみせた渾身のラップを思い出した。おばちゃんも素晴らしかった。濡れ場もフルヌードもどんとこいの体当たり。光石研におっぱい触られてるときの表情とか絶妙だったなあ。弁護士もねえ、よくあんなにいやみったらしい顔できる人を見つけてくるよな〜(褒めてる)

とにかくどいつもこいつも決してほめられた人物ではないし、映画のなかで彼ら、彼女らが抱えている苦悩が解決するわけでもない。そういう意味では感情移入がしにくい映画になってもおかしくないはずだし、そうなるほうが普通だと思うんだけど、そこはさすがの樋口監督、すこしだけ、ほんとうにほんのすこし、主人公たちが変化し、成長する、その兆しを垣間見せることで、まさに「それでも人は生きて行く」というキャッチコピーどおり、それぞれの人生が染み込んでくる。それぞれの登場人物たちが愛おしくてたまらなくなってしまう。

見事。見事な映画だった。