ストレイト・アウタ・コンプトン

80年代末期に登場し、世界を席巻したギャングスタラップの創始者N.W.A.を描く伝記ドラマ。

私は当時はアメリカよりヨーロッパ、もっと簡単にいえば同時期の音楽としてはストーン・ローゼスとかプライマル・スクリームとか、いわゆるマンチェ方面の方が好きだったこともあり、ラップというかヒップホップカルチャーには全く詳しくない。N.W.A.ももちろん名前は知っていたけど、特に関心をもって聞いた記憶はない。そんな程度の自分が観ても面白いんだから、宇多丸師匠はじめ、もともとヒップホップに詳しい人にはたまらんだろうなあ。

まずはドクター・ドレーアイス・キューブ、そしてイージー・Eそれぞれのキャクターが魅力的。この映画のプロデューサーでもあるドレーとアイス・キューブがやたらとカッコよく描かれているのはまあご愛嬌として、やっぱり泣けてきてしまうのはイージー・Eの描き方。filmarksでも多くの人が指摘しているようだけど、この映画でもっとも「あがる」瞬間はイージー・Eがはじめてラップするシーンだろう。下手くそな彼が、ドレーに失笑されながら、でも「魂をこめるんだ」と諭されながら、グルーブを生み出したその瞬間。まさにそれがギャングスタラップがほんとうの意味で産まれた瞬間として描かれている。どちらかといえば知的なドレーやアイス・キューブとは異なり、実際に麻薬の売人だったイージー・E。彼のチンピラ的なカリスマこそがギャングスタラップを成功に導いたのだ。そう受け取れるように映画が作られていることにとても好感をもった。

この映画のおかげで、あまり興味のなかったギャングスタラップの周辺のことに初めて関心を持った。デス・ロウ・レコードのこと。ジュグ・ナイト。ブラッズとクリップス。そしてN.W.A.のファーストアルバム「ストレイト・アウタ・コンプトン」も速攻で買った。しばらくはこの周辺のことを調べたり聞いたりすることに夢中になりそう。

いまさらながらのヒップホップカルチャーとの出会いに感謝。