幸せなひとりぼっち

どうにもだっさい邦題のせいで、まったく興味がわかないというか、目にも留まってなかった映画なのだが、filmarksでやりとりさせてもらってる友人(大学の後輩、映画を観る目はとても確か!)がレビューを書いてくれてて、ようやくその存在に気付き、観に行ってみました。新年最初の映画にふさわしい、ほっこりした良作でした。

ざっとあらすじだけいえば、偏屈頑固爺さんが奥さんに先立たれ、仕事もクビになって、早く奥さんのところに行きたいと自殺を試みるんだけど、たまたま越してきた隣人たちとのドタバタで死に損ねているうちに凝り固まっていた心が溶けていく、、、というお話。困った爺さんの心がだんだんほぐれていくという点では、それこそイーストウッドグラン・トリノとか、ほかにもいっぱい映画にあるパターンで、映画としては鉄板のパターンのひとつで、この映画もまた、過去作に負けず劣らずの秀作に仕上がっている。これもまた困った爺さん映画の王道ではあるのだが、なんといっても奥さんが素敵すぎて、最初は奥さんのことが、そしてそんな奥さんに愛された爺さんが愛おしくてたまらなくなる。偏屈な爺さんでありながら、移民とか性的マイノリティには偏見がないあたりもナイス。

なかでも回想シーンの入れ方はとてもうまい。抑制の効いた脚本、演出、演技、そして何よりハイテンポな編集によって、いかにも泣かせにくるような嫌味がなく、上品に仕上がっていたと思う(ただし上述の友人と同じく、僕も音楽だけはやや過剰に感じた)。

それにしても北欧の映画はやっぱり良いよね。特に色彩はとても好き。この爺さん、自殺しようとするときに毎回毎回やけにくたびれたスーツで正装するんだけど、それがまた根っからの愛国者らしいスウェーデン国旗の青と黄色で、その薄ぼけた色合いにぐっときた。