クーリンチェ少年殺人事件

素晴らしかった。4時間。まったく飽きることがなかった。これが映画だ。これこそが映画だ。誰もが言うことだけど、僕もずっとそう思いながら観てた。光と影のコントラスト。考え抜かれた画角。鍛え抜かれた台詞。演出。さりげなくちりばめられる暗喩。単なる背景以上の意味を孕む音楽。そして何より、一人一人、一粒一粒の「人間」を丁寧に描きながら「社会」そのものを映し出す。あらゆる意味で飛び抜けたエドワード・ヤンの才気に、ひとりひとりの登場人物に注がれる惜しみない愛情に震えがくる。あまりにも衝撃的なクライマックスが頭に焼き付いて離れない。ひりひりするなんてもんじゃない。小四の痛み、小明の痛みに、胸が潰れそうになる。痛い。痛い。苦しい。でもたまらなく美しい。
あのシーンが好き。あの登場人物が好き。あのショットが好き。あの台詞が好き。細部を語り出したらどれだけでも語れてしまうと思う。この映画を復活させてくれたスコセッシに心からの感謝を。


<追記>
紹介動画を探すうち、「リバーズ・エッジ」を撮る行定勲監督のコメント動画を発見した。そういえばこの映画の痛みは「リバーズ・エッジ」の痛みにとても似ているかもしれない。行定さんの映画が成功することを心から祈っております。