台北ストーリー

ユーロスペースにて。「恐怖分子」「クーリンチェ」にいたる前の作品ということで、作品としての完成度はやや低いかもしれない。オフビート感が立ちすぎて映画としての抑揚にかけると感じる人もいると思う。しかし映画史に残る傑作を残す「天才」の片鱗はそこかしこに。

エドワード・ヤンの代名詞ともいえる光と影の演出、徹底的に考え抜かれた構図はこの映画においても秀逸(というか、これより前の「光陰的故事」からそうなんだけど・・・)。そして何より、個人を掘り下げながら社会を描写するという基本的な映画の姿勢はすでに完成の域に達している。

エドワード・ヤンの映画を見てるといつも、これこそが映画だ、と思う。すべての映画はその時代を写す鏡である。急速に経済が発展する80年代の台北に染み込んでいく寂しさ。常にその時代の寂しさに寄り添ってきたエドワード・ヤンの優しさが、じわりと染み込んでくる。