LOGAN ローガン

予告編から傑作の雰囲気漂っていた本作。いまのところ今年度ナンバーワンの大傑作だった(クーリンチェを別枠として)。

X-MAN、ウルヴァリンシリーズは僕はあまり見てなくて。そんな薄いファンの私でさえ後半は涙涙。これ、ずっと見てきたファンの人は前半からたまらんのじゃないかなあ。ミュータントがほぼ絶滅した近未来。年老い、アルコールに溺れるウルヴァリン(ローガン)。まちはずれの廃工場にプロフェッサーX(チャールズ)をかくまいながら、終わらない終わりに向かう彼の前に、ひとりの少女が現れる。野獣のような、かつての自分のような少女。

全身全霊を尽くしたというヒュー・ジャックマンの演技が本当に素晴らしい。チャールズ役のパトリック・スチュアートも完璧。だがこの映画の最大の驚きは、少女ローラを演じたダフネ・キーンではないだろうか。「タクシー・ドライバー」のジョディ・フォスター、「レオン」のナタリー・ポートマンにも匹敵するというレビューを見かけたけど、僕もその通りだと思う。アクションもできて。とんでもなく説得力のある目をしてて。10年にひとりの逸材中の逸材。

そんな3人の素晴らしい演技を引き出した脚本にも惜しみない称賛を。いわゆるロードムービーの形式をとりながら、ひとりひとりのキャラクターの魅力を、悲しみを、深く、丁寧に掘り下げる。さらには現代のアメリカが抱える社会問題をさりげなく提示してみせる。無駄なところがひとつもない、ソリッドにして奥行きを持つストーリー。そんな重厚な世界観を見事に再現した美術、撮影も特筆に値する。チャールズがかくまわれているタンクの圧倒的なビジュアル!そこにこめられたメタファー!ひとつひとつのカットに、セリフに、どこまでも深読みできる意味がある。劇伴もとても的確で、とにかくなんだ、この映画、完璧なんですよ!完璧!!

シリーズの最終話としても、単発の映画としても、とんでもない傑作だと思います。僕的にはあの「マッドマックス 怒りのデスロード」にも匹敵する大傑作だと思う。陽気なルックスの「ガーディアンズ」とは対照的な映画だけど(個人的にはどっちも好き!)、そんな二作を同時に生み出してしまう今現在のマーベルの充実ぶりには感嘆せざるを得ません。一時のピクサーをさえしのぐ。

R15も納得のゴア描写満載だし(しかしそこにも単なる悪趣味ではなく、物語上の必然性があります)、そもそもアメコミには興味ないって人もいると思いますが、そんな人にもぜひ観てもらいたい映画です。ものすごく大切なテーマが内包されている映画であり、クライマックスでは涙がとまらなくなる、重厚な人間ドラマでもあります。僕もいま、これ書きながらローガンが全力で走るあのシーンを思い出して泣いている。こんな傑作を生み出してくれたジェームズ・マンゴールド監督に最大限の称賛と感謝を。