ロデオ★座★ヘブン「大帝の葬送」

十七戦地の柳井祥緒が脚本・演出した舞台を王子小劇場にて。大帝、昭和天皇崩御を目前に、新元号の制定と発表、葬送のあり方などを決定するため、官邸、宮内省、警察、法制局などの実務者で構成された会議(幹部会)を描く論争劇。大変難しい題材ながら柳井さんはさすがのリサーチ力で、この手の歴史ものが大好き、かつここまで大ごとではないとしてもいわゆる寄り合い所帯での政策決定的な仕事をすることもある僕が見ても、それぞれの省庁の立場とか、ひとりひとりのキャラクターには強い説得力があった。しかもそれをしっかりエンターテイメントに仕立てていることに感心。
密室劇にしたのは「演劇」というフォーマットからの当然の帰結でもあるだろうけど、この題材にとてもあっていたと思う。限られた空間、限られた登場人物にフォーカスすることで、別に政府関連の仕事をする人だけでなく、さまざまな立場の人が、自分だったらどう感じるか、どう振る舞うか、自分の仕事上のポジションと重ねながら見るのではないか。
僕はあの演劇のなかだと「事務の人」に近い立場にいることが多いけど、最終的に「まとめる」ことへの責任感とか、苦悩とか、ものすごいよくわかる。ひょっとしたら演劇での脚本家とか演出家の役割もそうなのかもしれないけど。
最近の僕が涙もろすぎるのかもしれないけど、ひりひりしつつ、ユーモアも交えつつ、それぞれの主張がぶつかりあい邂逅する様を見ていると、なんとなくじわっとくるものがあるのです。不思議の国・日本。さまざまな矛盾を抱え込みながら、それでもぎりぎりの整合性を求めて、最善を求めて努力する実務者たち。その様を僕は美しいと思う(同時に、果たしていまの政府はここまで真剣に議論してくれているのだろうかとモヤモヤもするのですが・・・)。
ひとつの演劇作品として傑作だと思います。今日までの上演だけど、これからでも間に合うと思うので、ご興味のある方はぜひに。柳井さんには、ぜひこの台本を大事に、さらに育ててもらえればと思います。

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