最愛の子ども

松浦理英子。デビュー作の「葬儀の日」からのファンで、「親指Pの修行時代」は何度も読んだ。「犬身」も好きだったなあ。その「親指P」や「犬身」も含め、松浦さんの小説はいつも「普通」ではない性愛を描いている。特に女性同士の愛は松浦さんの十八番。この本もその系譜にあると思って良いと思うのだが、しかも今回は「高校」が舞台となっている。つまりは「女子高生」たちの物語。そのことでより際立つ、甘く、切なく、淡い、恋(簡単に「恋」といってしまって良いかどうか戸惑うけど、あえて)。
かっこいいリーダーとしての父、反抗的だけど父と娘には心を許す(あるいは許そうとしている不器用な)母、そして無垢さの象徴としての娘。三人の女子高生が構築する疑似家族。そして、そんな三人の関係性を見守り(あるいは妄想し)、三人が織りなす物語を書き留めていくまわりの女子高生たち。凝った構成ではあるものの、松浦さんの小説ってこんなに読みやすかったっけ?という感じで、すいすい読み進めることができる。しかし読み味はとても切ない。誰にとっても自分の記憶に重ねやすい、思春期の反発、あるいは自らのアイデンティティに関する苦悩が描かれるからだろうか。あるいは、松浦さん自身がそう語っているらしいが、今回の作品がかつての荒ぶる自分の魂を救済するために書かれているからだろうか(女子高生3人の疑似家族のなかで母親役を務める少女には松浦さん自身の高校生時代が投影されているそうだ、さもありなん)。
女子高生の淡い百合話をおじさんが喜んで読むものいかがなものかと思わなくもないが笑、魅力的な松浦作品をまたひとつ読むことができて、僕はとても嬉しい。

最愛の子ども

最愛の子ども